天文・数学のはなし

局所銀河群と銀河群の違いとは?銀河系・銀河団・超銀河団についても徹底解説!

記事内に商品PRを含む場合があります

夜空に瞬く星々。

その光のひとつひとつが太陽のような恒星であり、私たちが住む天の川銀河に属しています。

「そもそも銀河ってなんだろう?」

「銀河たちはどのように存在しているのだろう?」

今回の旅は私たちが暮らす地球、太陽系、天の川銀河を飛び出して、銀河たちがどのように集まり、進化してきたのかを探る壮大な冒険です。

銀河系とは?

まずは「銀河系」という言葉の意味について知っておきましょう。

銀河系とは私たちの住んでいる銀河で、通称天の川銀河です。

「銀河系」という名前の響きから遠くの銀河をイメージされるかもしれませんが、実際には私たちのすぐそばにあります。

私たちの住んでいる天の川銀河を「銀河系」といい、その外にある銀河を「系外銀河」と言います。

銀河系の正体とは?

銀河系とは数千億個もの星々とガス、塵、そして見えないダークマターによって構成された巨大な渦巻銀河です。

銀河系には単なる恒星の集団以上の複雑な構造が存在しています。

主な構成要素には、

・恒星(太陽を含む)

・惑星系(太陽系のようなもの)

・星間ガスとダスト(新しい星の材料)

・星雲(星間ガスが高いエネルギーで光っている場所)

・星団(恒星が集まった小さな集団)

・ダークマター(重力には影響するが光を発しない謎の物質)

などが含まれており、これらが重力によってひとまとまりになっています。

巨大ブラックホールいて座A*

実は、私たちの銀河系(天の川銀河)の中心にもブラックホールがあるんです!

いて座A*と呼ばれています。

質量は太陽の430万倍ほどで、地球から27000光年ほど離れています。

2022年にEHTによって画像化されて、一時期話題になってましたね。

天の川銀河にもいくつかブラックホールがあるとされ、2022年には”Gaia BH1″という小さなブラックホールが発見されました。

質量は太陽の9.6倍ほどで、非常に小さいです。

へびつかい座方向にあり、地球からはたったの1560光年ほどしか離れていません。

このブラックホールは現在休眠中らしく、物質を吸い込んでいないみたいです。

局所銀河群とは?

次に知っておきたいのは、私たちが今いる「局所銀河群」という存在です。

局部銀河群と呼ばれることもあります。

これは単独でポツンと存在しているのではなく、複数の銀河たちが重力によって互いを引き寄せ合い緩やかに結びついて形成している銀河の集団です。

私たちの天の川銀河もこの局所銀河群の一員なんですね。

局所銀河群の銀河の数は約50個以上で、大きさは直径300万光年ほどです。

この銀河群は「局所」と呼ばれていますが、そのスケールは人間の感覚からすれば想像もつかないほど巨大です。

直径300万光年という広がりは、私たちの太陽系が存在する天の川銀河のサイズ(約10万光年)をはるかに超える広さです。

ここでは局所銀河群のメインプレイヤーたちを紹介します。

天の川銀河

私たちのふるさとです。

約10万光年の直径を持つ渦巻銀河で、推定で2000億-4000億個の恒星を抱えています。

銀河中心部には超巨大ブラックホール「いて座A*」が存在し、天の川銀河全体の重力の中心となっています。

天の川という名前がついたのは、私たちの地球から見ると天の川が細長く縦に走っているように見えるからです。

私たちにとって最も身近な銀河ですね。

アンドロメダ銀河(M31)

局所銀河群最大の銀河で、天の川銀河よりも一回り大きいです。

見た目はこんな感じです。

約22万光年の直径を持ち、1兆個以上の恒星を抱えていると推定されています。

現在私たちに秒速約110kmの速さで接近しており、未来には運命的な衝突が待っています。

さんかく座銀河(M33)

アンドロメダ銀河の伴銀河ともいわれる中規模の渦巻銀河です。

直径は約6万光年と天の川やアンドロメダに比べると小ぶりですが、星形成が非常に活発な「若い銀河」として知られています。

見た目はこんな感じです。

赤いポツポツが複数見えますが、そこがまさに星形成が活発なHII領域です。

局所銀河群のミニ銀河たち

局所銀河群には個性的な伴銀河がたくさんあります。

いくつか紹介しますね。

大マゼラン雲

天の川銀河に引き寄せられてぐるぐる回っている衛星銀河です。

南半球に行かないと見れない銀河です。

見た目はこんな感じです。

星図アプリ Sky Guide より

地球からの距離はおよそ16万光年と、非常に近い位置にいます。

そのためかなり巨大に見えます。

視直径は満月の20倍くらいです。

南半球に行ったら、夜空で雲みたいにもやもやしているものが見えるそうです。

面白いですね。

大マゼラン雲の中には特に明るく輝いているタランチュラ星雲がいます。

小マゼラン雲

これも天の川銀河の衛星銀河で、南半球に行かないと見れない銀河です。

大マゼラン雲の近くで一緒に空に浮いています。

見た目はこんな感じです。

Sky Guide より

大マゼラン雲よりかは迫力がないですが、それでも面白い形をしていますね。

地球からは20万光年ほど離れています。

NGC6822

「バーナードの銀河」と呼ばれることもある銀河です。

見た目はこんな感じです。

Sky Guide より

地球からは160万光年も離れていますが、天の川銀河の伴銀河と考えられているようです。

局所銀河群のメンバーとして宇宙空間にぽつんと浮いています。

IC1613

IC1613も小さな不規則銀河で、宇宙にぽつんと浮いています。

見た目はこんな感じです。

Sky Guide より

地球からの距離は240万光年ほど。

かなり暗く、淡いので肉眼では見えません。

NGC147

天の川銀河だけでなく、アンドロメダ銀河にも多くの伴銀河があります。

NGC147はアンドロメダ銀河の衛星銀河です。

見た目はこんな感じです。

Sky Guide より

天文学的には矮小楕円銀河という分類がされています。

地球からの距離は250万光年ほどです。

NGC185

これもNGC147と同じく、アンドロメダ銀河の衛星銀河です。

見た目はこんな感じです。

Sky Guide より

地球からの距離は200万光年ほどです。

局所銀河群と銀河群の違いは?

ここで知っておきたいのが局所銀河群と銀河群の違いです。

簡単に説明すると、「局所銀河群」は天の川銀河を含む数十個の銀河の集まりを指します。

一方、「銀河群」は宇宙空間に浮かぶ銀河の集まりを指します。

なので局所銀河群は銀河群の中でも特別で、私たちの天の川銀河を含んでいるものです。

宇宙にはたくさんの銀河群がありますが、私たちのお隣さんを「局所銀河群」と呼んでいるわけですね。

宇宙に浮かぶ銀河群の紹介

ここで銀河群に親しみを持ってもらうために、宇宙に浮かぶ銀河群の中で面白いものをいくつか紹介したいと思います。

HCG44銀河群

しし座の方向にある銀河群で、4つの銀河が集まってます。

見た目はこんな感じです。

楕円形のものや黒い暗黒帯が走っているもの、曲がっているもの、渦巻きのものがあって楽しいですね。

個人的に一番好きな銀河群です。

HCG61銀河群

かみのけ座にある銀河群で、かなり小さいですが面白い形をしています。

見た目はこんな感じです。

“The Box” という愛称がついています。

HCG92銀河群(ステファンの五つ子)

ペガスス座にある銀河群で、5つの銀河が集まっている様子から五つ子と呼ばれています。

見た目はこんな感じです。

JWSTで撮影された画像がこちらです。

5つの銀河が集まっていて賑やかですね。

JWSTの解像度の高さには驚かされます。

銀河群と銀河団の違いとは?

次に知っておきたいのは、銀河群と銀河団の違いです。

宇宙に漂う無数の銀河たちは完全に孤立しているわけではありません。

むしろ重力によって集まり、まとまりを作りながら存在しています。

このまとまりには規模によって大きく2種類あり、それが銀河群と銀河団です。

銀河群とは?

銀河群とは、数個から多くても数十個程度の銀河が比較的ゆるやかな重力の束縛によってまとまっている小さな集団のことを指します。

まさに「宇宙の田舎の村」のようなイメージです。

銀河群に属する銀河同士はかなり距離が離れている場合も多く、銀河同士の衝突や合体は頻繁には起こりません。

それぞれの銀河が緩やかに、しかし確かに互いを引き合いながらのびのびと存在しているのです。

私たちの天の川銀河が属する「局所銀河群」がその代表例です。

他にも色々な銀河群が宇宙に浮かんでいます。

この局所銀河群には天の川銀河、アンドロメダ銀河、さんかく座銀河といった大型銀河に加え、数多くの小さな矮小銀河が含まれています。

銀河群は宇宙の中ではごくありふれた存在であり、比較的若い銀河が多く含まれている場合もあるんですね。

銀河団とは?

一方、銀河団とは銀河群とは比べものにならないほどの規模を持つ、超巨大な銀河の集団です。

数百から数千個もの銀河が、非常に密度高くひしめき合っています。

銀河団を例えるなら「宇宙の大都市」といったところでしょう。

そこでは銀河同士の距離が非常に近く、重力も強力なため銀河同士の衝突や合体が日常茶飯事です。

古い銀河団ではすでに多くの銀河が衝突してしまっていて、楕円銀河ばかりです。

さらに銀河間には高温のガスが充満しており、これが強いX線を放射しているためX線観測によって銀河団を発見することもできます。

代表的な銀河団にはおとめ座銀河団やかみのけ座銀河団があります。

色々な銀河団についてはこちらの記事で解説しています。

これらの銀河団は数千個もの銀河を抱え、さらにその中心には超巨大な楕円銀河が鎮座していることが多いです。

こうした中心銀河は周囲の小さな銀河を次々と飲み込みながら成長していく運命にあります。

銀河同士の衝突とは?

銀河同士は重力によって引き寄せられ、衝突し、融合します。

ただし、銀河の中の星々の距離はとても広いため、個々の恒星同士はほとんどぶつかりません。

代わりに銀河内のガスや塵がかき乱され、爆発的な新しい星の誕生(スターバースト現象)が起きます!

衝突の影響で、銀河の形状も大きく変わることがあります。

衝突銀河でいちばん有名なのは子持ち銀河(M51)です。

2つの銀河が重力によって引き寄せられ、今まさに合体している最中です。

その潮汐力によってガスが吹き出ていますね。

衝突銀河の特徴として、銀河の中に赤いポツポツが多くできたりガスが吹き出たりするんですよ。

面白いですね。

そして驚くべきことに、私たちの住む天の川銀河とアンドロメダ銀河も秒速110kmという速さで互いに近づいています。

未来約40-50億年後、両者は衝突・融合し、新たな巨大楕円銀河(仮称:ミルコメダ銀河)を作り出すと考えられています。

そのとき地球から見える夜空はどうなっているのでしょうか?

想像するだけで胸が高鳴りますね。

超銀河団とは?

銀河群、銀河団と見てきましたが、宇宙はそれで終わりではありません。

さらにスケールアップした、銀河たちの超巨大なネットワークが存在しているのです。

それが超銀河団(Supercluster)と呼ばれる構造です。

超銀河団とはいくつもの銀河団や銀河群が重力によって緩やかに結びつき、巨大なネットワークを形成している宇宙の超大規模構造のことです。

銀河群や銀河団が街や都市だとすれば、超銀河団はそれらが集まった大陸のようなものです。

そのスケールは直径数億光年にも達します。

つまり、光の速さで進んでも超銀河団を端から端まで移動するには何億年もかかるのです。

一般的な超銀河団は直径が1億光年から5億光年にもおよびます。

中には、それ以上の超巨大構造も存在することがわかっています。

超銀河団の中にはいくつもの銀河団(それぞれ数百~数千個の銀河が集まる集団)が点在しており、これらが重力によって緩やかに互いを引き合っています。

ただし重要なのは、超銀河団の構成要素である銀河団同士はまだ完全には一つにまとまっておらず、今後の宇宙の膨張次第で互いに離れていく可能性もあるという点です。

つまり、超銀河団は「ゆるやかに結びついた巨大な島々」のようなものと考えられます。

私たちが属するラニアケア超銀河団

実は私たちもひとつの超銀河団に属しています。

その名もラニアケア超銀河団(Laniakea Supercluster)です!

「ラニアケア」とはハワイ語で「無限なる天国」という意味です。

このネーミングにふさわしいほど、ラニアケア超銀河団は圧倒的なスケールを誇ります。

ラニアケア超銀河団は直径が約5億光年で、含まれる銀河の数は約10万個以上です。

私たちが住んでいる局所銀河群はもちろん、おとめ座銀河団やかみのけ座銀河団も含まれています。

超銀河団内部では銀河たちが「重力の流れ」に沿って中心部へと引き寄せられています。

この巨大な超銀河団の中で、私たちの局所銀河群は小さな一角を占める存在に過ぎません。

まるで広大な大陸の片隅にある、小さな町のようなものです。

超銀河団のさらに上にあるものは?

実は超銀河団同士もまた、完全な孤立状態ではありません。

宇宙全体を俯瞰してみると、超銀河団たちはコズミックウェブ(宇宙の網目構造)と呼ばれる巨大なネットワークを形成しています。

銀河たちが糸のような構造に沿って連なり、広大な空間に泡のような領域を作っているのです。

このコズミックウェブは宇宙最大スケールの構造であり、ビッグバンから始まった宇宙の膨張と重力の相互作用によって自然に形成されたと考えられています。

これからの天文学の発展でさらなる秘密が解き明かされていくでしょう。

期待したいですね。

最後に

ここまでで色々な宇宙の構造を話してきました。

このような話を聞くと、私たちの住んでいる地球がいかにちっぽけな存在か分かると思います。

日常に疲れたら遠い宇宙に思いを馳せて、「こんな世界もあるんだ」と感じてみてください。

夜空を見上げたら無数の星々があなたを待っています。

晴れた日の夜、ぜひ夜空を見上げてみませんか。

では。

星空が大好きな19歳
みつき
星景写真や天体写真が大好きな19歳です。横浜市内のベランダから天体を撮影したり、城ヶ島や野辺山に遠征して星空を撮影したりしています。少しでも星空の魅力が多くの人に伝わるとうれしいです。私の知られざる過去はプロフィールページで書いてます。気になる方はぬいぐるみの写真をタップしてください。
\ Follow me /

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です