星の見かた

都会で星が見えない理由。光害、ボートル・スケールや星の見える場所まで徹底解説!

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夜空を見上げたのに、星がまったく見えない。

そんな経験をしたことはないでしょうか。

特に都会では、夜空が白っぽいという印象を持つ人も少なくありません。

しかし、本来夜空には数千もの星が見えるはずです。

ではなぜ、都会の夜空は星が見えにくいのでしょうか?

この記事では「都会で星が見えない理由」を詳しく掘り下げ、星を見るためにできる対策についても紹介します。

光害が最大の原因

都会で星が見えない最大の原因は光害(ひかりがい)です。

光害とは街灯やビル、看板など人工的な光が夜空を明るく照らしてしまう現象を指します。

本来夜空は太陽が沈んだ後、地上からの自然光がほとんどなくなることで真っ暗になります。

しかし都市部では至るところに強力な光源があり、それらが空気中の微粒子や水蒸気に反射して空全体を明るくしてしまうのです。

この夜空の明るさによって暗い星の光は背景に埋もれてしまい、肉眼ではほとんど見えなくなってしまいます。

特に都会の中心部では2等星以上の明るい星しか見えないことが一般的です。

ひどい場合は1等星しか見えないときもあります。

一方、光害の少ない山間部や海辺では6等星以上の微かな星まで肉眼で確認できるため、夜空の印象はまるで別物になります。

光害の主な要因

光害の主な要因を解説します。

・街灯

道路や公園など、至るところに明るい街灯が設置されています。

LED化が進んでから光害はさらにひどくなり、都会では夜になっても明るいままです。

・ビルや商業施設の照明

ビルの外壁や屋上の広告灯、24時間営業店舗の照明もあります。

高層ビルの光は特に酷く、空高くまで明るく照らしてしまいます。

・自動車のライト

絶え間ない交通によるヘッドライトやテールライトの反射があります。

幹線道路が近いと特にひどいでしょう。

・イベント照明やイルミネーション

季節イベントや観光促進で使われる強い光源もあります。

冬の時期に行われる大規模イルミネーションは光害のもとです。

(22時くらいに消してくれれば全く問題ないと思います)

これらが積み重なり、都会の空は灰色や黄色に近い色合いとなってしまうのです。

大気汚染と水蒸気の影響

光害に加えて、都会ならではの大気汚染も星が見えにくくなる一因です。

排気ガスや工場の煙、建設現場からの粉塵などが大気中に浮遊し、これらが空気中の微粒子(エアロゾル)として留まります。

この微粒子は夜の光を散乱させ、空全体をさらに明るくしてしまう働きがあります。

また、都市部は気温が高くなりやすくヒートアイランド現象と呼ばれる現象が起きます。

これによって水蒸気が発生しやすくなり、大気中の湿度が高まります。

水蒸気もまた光を散乱させる原因となり、星の光をぼやけさせる要素となってしまうのです。

つまり、光害・大気汚染・水蒸気のコンボによって、都会の空は星が見えない「人工的な薄明状態」になってしまっているのです。

特に4月の花粉や黄砂の時期は最悪で、この前は1等星のスピカすら見えませんでした。

大気汚染も恐ろしいですね。

目の順応が妨げられる

暗いところに入ったとき、時間が経つと目が慣れて見える範囲が広がる経験はありませんか?

これは「暗順応」と呼ばれる現象です。

人間の目が暗闇に慣れるにつれ瞳孔が広がり、取り入れられる光の量が多くなります。

星を見るためには目が暗闇に慣れる暗順応が非常に重要です。

しかし都会では周囲が常に明るいため、暗順応が十分に進みません。

歩道や建物から漏れる光が目に入り続けることで瞳孔は十分に開かず、暗い星を視認できない状態が続きます。

星空観察に最適な暗順応には完全な暗闇で20分ほどかかるとされていますが、都会ではまずその条件が満たされないのです。

建造物による視界の制限

都会では高層ビル、タワー、看板などが立ち並び、水平線や地平線までの視界が大きく制限されます。

天体観測では視野が広いほど多くの星を見ることができます。

しかし都会では空の一部しか見ることができず、特に低空に現れる天体(例えば昇りたての惑星や、地平線近くの天の川)を目にする機会がなくなります。

「空は広いもの」という感覚すら持てなくなるのが都市空間特有の問題です。

都会でも星を楽しむ方法

とはいえ、都会に住んでいても工夫次第で星を楽しむことは可能です。

ここではいくつかの方法を紹介します。

より暗い場所を探す

公園、河川敷、屋上、広い運動場など、周囲にできるだけ強い光源がない場所を探しましょう。

完全な暗闇は無理でも、周囲が少しでも暗ければ見える星の数は格段に増えます。

個人的には周りを木に囲まれた公園がおすすめです。

都内でも木がたくさんある公園はいくつかあります。

少し移動するだけで随分違いますよ。

月や惑星を狙う

都会の明るい空でも、月や金星、木星、土星といった明るい天体は比較的簡単に見つけることができます。

特に満月や、木星・土星の衝と呼ばれる最接近イベントはおすすめです。

まずは月の観察からしてみてはいかがでしょうか。

天体写真に挑戦する

肉眼では見えにくくても、カメラを使えば光を長時間集めることができ、写真上では多くの星を捉えられます。

また、スタックという何百枚もの画像を重ねる手法でノイズを劇的に減らすことができます。

私も横浜市内からM81とM82を撮影しました。

工夫次第では結構遊べます。

プラネタリウムに行く

どうしても本物の星空を見るのが難しい場合は、プラネタリウムも良い選択肢です。

本来見えるはずの満天の星空を快適な室内で疑似体験することができます。

渋谷のコスモプラネタリウムは600円ですごく安かったですが、太陽系の成り立ちの解説が聞けてかなり楽しかったです。

プラネタリウムも結構楽しいので行ってみるといいと思います。

歌舞伎町では夏の大三角すら見えない!?

夏の夜空を見上げれば、夏の大三角が輝いている。

そんなロマンチックなイメージを持つ人も多いでしょう。

夏の大三角とはこと座のベガ、わし座のアルタイル、はくちょう座のデネブという、三つの明るい星を結んだ大きな三角形のことです。

特にベガはなんと0等星(+0.03等級ほど)で、非常に明るい星なんです。

普通なら少し街明かりがあっても、ベガやアルタイルのような1等星クラスの明るい星は肉眼で十分見えるはずです。

ところが私が新宿・歌舞伎町で空を見上げたとき――

……何も見えない。

夜空にはかすかな明るさすら感じられず、ただ白っぽくぼんやりした空間が広がっていました。

強烈な街明かりの下はまるで昼間のような明るさでした。

なぜ歌舞伎町では夏の大三角すら見えないのか?

理由は明白です。

歌舞伎町は、東京でも屈指の「光害地帯」です。

ビルのネオンサイン、巨大モニター、イルミネーション、店舗の照明、そして大量の交通の光。

ありとあらゆる人工光が交錯し、夜空はほぼ昼間のような明るさになっています。

いくらベガが0等星の明るさを持っていても、その「背景」がここまで明るいと、人間の目ではまったく区別できなくなるのです。

正直ここまでひどいとは思っていませんでした。

ベガすら見えないのはかなり驚きでしたね。

その日の夜、世田谷区の木に囲まれた公園に移動したら夏の大三角がばっちり見えました。

少しの移動も大切です。

ボートルスケールを知ってロケハンに活かそう

では、実際にどのレベルの光害なら星が見えるのでしょうか。

それをわかりやすくレベル化したのがボートルスケールです。

クラス1からクラス9までの9段階で、数が小さいほど夜空が暗く星が見えやすくなります。

実際の日本の光害分布の地図はこのサイトから見れます。

それではひとつずつ見てみましょう。

クラス9:大都市内部の空

大都市中心部はクラス9です。

日が沈んでも空はオレンジ色や灰色に明るく光っています。

天の川は完全に見えません。

最も明るい数個の星(1等星)しか肉眼で見えず、場合よってはそれすら見えない場合もあります。

目立つ明るい惑星(金星・木星など)はかろうじて認識できるでしょう。

天体写真や星座観察はほぼ不可能な環境です。

(例:東京・名古屋・大阪・札幌・福岡の中心部)

クラス8:都市の空

都市部だが中心からやや離れた地域です。

天の川は見えません。

明るい星座(オリオン座など)の主な星だけが見えます。

地平線近くまで空全体が明るいです。

明るい惑星は視認できますが、淡い天体(星雲・星団)は見えません。

(例:東京23区郊外、名古屋や大阪市内など)

クラス7:都市周辺部の明るい空

大都市の裾野のような地域で、多くの人がこの範囲に住んでいます。

やはり天の川は見えません。

オリオン座やおおいぬ座などの明るい星座は分かりますが、星の数は少ないです。

せいぜい2.5等級の星を見るのがやっとです。

空全体に薄い光害ドーム(明るいかぶり)があります。

双眼鏡や望遠鏡を使わない限りは天体は見れません。

明るいオリオン大星雲も肉眼では見れません。

(例:横浜市や神戸市などの、大都市圏の隣の都市)

クラス6:明るい郊外の空

頑張れば天の川が見えるという噂がありますが、普通は見えないでしょう。

多くの星座が判別できますが、星の数は少ないです。

天体撮影はある程度可能ですが、処理で強い光害補正が必要になると思います。

(例:大都市圏の端っこのような地域、地方都市の中心部など)

クラス5:郊外の空

天の川が見えるが、淡い部分はほとんどわかりません。

ですが多くの星座が肉眼でわかります。

明るい星がよく見えるようになってきます。

双眼鏡・小型望遠鏡である程度の天体観測が楽しめます。

(例:大都市圏周辺の山間部、地方都市の周辺地域など)

クラス4:暗い郊外の空

ここから天の川がはっきり見えるようになってきます。

ただし細部(暗黒帯)は少し見えづらいです。

かなり多くの星が見えてきます。

肉眼でマイナーな星座が見えるようになってきます。

地平線方向に光害ドームがわずかに存在しますが、天頂付近はほぼ真っ暗です。

首都圏では城ヶ島がクラス4です。

城ヶ島では夏の天の川がはっきり見えました。

もちろん写真にも写ります。

(例:都市から離れた郊外、田舎の住宅地)

クラス3:田舎の空

天の川がくっきり見え、暗黒帯(天の川の黒い筋)も判別できるようになります。

星座の輪郭が目立たないほど星が多いです。

肉眼で多くのメシエ天体が確認できます。

アンドロメダ銀河も肉眼で見えるでしょう。

地平線付近を除けば、光害はほぼ気になりません。

野辺山はクラス3です。

実際に私が野辺山に行ったとき、どの星が何座なのかがわからないほど多くの星が見えました。

また、薄明が終わっていないのにカシオペヤ座がくっきり見えたのは衝撃でした。

冬の天の川も見えるほどすごい夜空でしたね。

(例:地方の山間部、海辺)

クラス2:暗黒の空

天の川が極めて鮮明に見え、モコモコとした立体感が感じられます。

明るい星によって地上に影ができるほどです。

肉眼で数百個以上の星が見えます。

夜空全体に自然な暗さと透明感があり、息を呑むような美しさです。

私が昔に乗鞍岳で見た夜空は格が違いました。

木星が月のように明るく、影ができていました。

淡い秋の天の川が頭上にはっきり流れているのが見え、流れ星も何個も見えました。

あそこまでの体験は一生に数えるほどしかできないでしょう。

(例:標高の高い山岳地帯、国立公園など)

クラス1:卓越した暗黒の空

理論上の最高の夜空環境です。

天の川が輝き、空全体に黒と白の濃淡があって壮観な眺めだそうです。

日本でクラス1の夜空となると本州から遠く離れた離島くらいしかありません。

沖縄の小浜島の星空はすごいらしいですね。

(私はその時部屋にいたので見れませんでした🥺)

機会があったらリベンジです。

星空を見る旅に出かけよう!

ここまで色々書いてきましたが、都会では限界があります。

普段は都会で月や惑星を楽しんで、たまの休日に星を見に出かけに行くのが一番いいでしょう。

一度は満天の星空と天の川を見てみてください。

あなたの世界観が変わるはずです。

では。

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