このブログでは横浜市から撮った様々な天体を紹介してきました。
特に人気なのは魔女の横顔星雲の記事です。
横浜市から魔女の横顔星雲が写るというのは自分でも衝撃でした。
そこで今回、魔女の横顔星雲の撮影で大活躍した Optolong L-Quad Enhance フィルターのレビューをしていきたいと思います。
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外観とスペック
外観はこんな感じです。

まあ普通のフィルターといった感じですね。
波長ごとの透過率のグラフはこちらです。

水銀とナトリウムの波長を回避し、SII, Hα, OIII, Hβ の波長を通すようになっています。
これを見た感じだと、そこら辺にある光害カットフィルターとあまり変わらなさそうです。
ですが海外のレビュー記事でべた褒めされていたのを見て、どんな感じなんだろうと思って購入して使ってみました。
結論ですが、このフィルターは星雲・星団・銀河、何にでも使えるオールラウンダーです。
実写画像を見ながらどんな感じなのか見ていきましょう。
実写画像
フィルターありとフィルターなしで比較しようと思ったのですが、最近曇り続きなのでやめました。
ですが使っていて思ったことはたくさんあるので書いていきます。
輝線星雲
まずは輝線星雲のかもめ星雲(IC2177)を見てみましょう。

詳しいことはこの記事で書いてます。
他の人の作品と比べるとピンク色が出ていないようです。
フィルターのせいかもしれません。
ですがかもめ星雲の周りの青い反射星雲はナローバンドフィルターでは出ない部分なので、そこが写っているのはうれしいポイントです。
星の色もきらびやかで、様々な色の星が写っています。
横浜市内の強烈な光害のせいでフィルターなしで撮ると大変なことになるでしょう。
私の家のベランダの向かいの棟の蛍光灯が眩しくていつも困っているのですが、このフィルターのおかげで軽減されているはずです。
次にトールの兜星雲(NGC2359)です。

詳しくはこの記事を見てください。
星の色が綺麗に出ていていいですね。
ナローバンドだと有り得ません。
ただ、他の人の作品だと星雲が青っぽいのに私のは緑色になってしまいました。
なぜなのか未だによくわかりません。
カメラの特性だという人もいます。
カラーカメラで撮ったらこんなふうになってしまうのでしょうか。
謎です。
反射星雲
輝線星雲は赤いものが多いですが、青っぽい反射星雲も存在します。
青っぽい反射星雲はナローバンド撮影では全く写らず、苦戦されている方も多いでしょう。
まずはオリオン大星雲(M42)周辺を見てみます。

強調しまくったのでノイズまみれですが、それを差し置いても驚異的な写りです。
横浜市からここまで写ればいい感じではないでしょうか。
注目してほしいのはオリオン大星雲の上にある青い反射星雲、ランニングマン星雲です。
ナローバンド撮影では青い星雲が全く写りませんが、今回はばっちり写っています。
L-Quad Enhance では青い反射星雲は写らないかと思い込んでいましたが、ただの勘違いでした。
次はアゲハチョウ星雲(NGC2170)です。

極めて淡い反射星雲とされるNGC2170ですが、横浜市内からなんとか姿を捉えることに成功しました。
ひとえに L-Quad Enhance フィルターのおかげでしょう。
一度フィルターなしでアイリス星雲を撮ったことがあるのですが、こんな感じになってしまいました。

強調処理する前でこれなので全く使い物にならないですね。
いかに L-Quad Enhance フィルターがすごいかがわかります。
L-Quad Enhance フィルターのすごいところは、色被りがほとんど消えるのでフラット補正が楽になる点です。
基本的にPixInsightのABE(AutomaticBackgroundExtractor)で事足りてしまいます。
散開星団
次は散開星団を見てみます。

ペルセウス座の二重星団です。
見た限り、星の色が死んでいるということはなさそうです。
白色、オレンジ色、黄色の星の色がちゃんとわかります。
次はカシオペヤ座のNGC7789です。

かなり彩度を上げた作品ですが、星の色が自然に出ています。
黄色、青色の星もちゃんと出ています。
最初、水銀とナトリウムの波長をカットすると聞いて黄色の星の色は出にくくなっているのではないかと思いました。
ですが全く問題ありませんでした。
散開星団に対しては色被りを抑えつつ、自然な色表現もしてくれる優れたフィルターだと思います。
球状星団
今度は球状星団の番です。
M5を見てみましょう。

反射望遠鏡による作品です。
反射望遠鏡はフラット補正が合いづらいことで有名ですが、L-Quad Enhance フィルターのおかげで簡単にフラットを合わせることができました。
星の色も極めて自然でとても綺麗です。
左下の星の十字の光条も綺麗に出ていていいですね。
次はM53です。

これは屈折望遠鏡による作品です。
星の色が自然に出ています。
f値が暗かったのでノイズが多めですが、長時間露光すれば済む話です。
球状星団にも L-Quad Enhance は安心して使えそうですね。
銀河
次は銀河です。
ソンブレロ銀河(M104)を見てみましょう。

銀河の色もちゃんと出ています。
調べたら実際にこんな感じの色みたいですね。
周囲の星の色もちゃんと出ています。
M100も見てみましょう。

銀河の渦巻きがちゃんと出ています。
色が赤っぽくなったり薄くなったりすることもなく、構造も潰れていないです。
L-Quad Enhance フィルターは銀河に対しても優れた効果を発揮します。
銀河群・銀河団
最後は銀河群・銀河団です。
うみへび座銀河団(Abell1060)を見てみます。

この銀河団は南の低空に昇ってきて、南中しても高度が27°にしかならないという超厄介な天体です。
南の低空には向かいの棟の蛍光灯が煌々と輝いている状況で、まともな写真を撮ることは絶望的でした。
しかしそこまで心配はいらなかったようです。
もちろん暗い場所から撮影された写真には到底かないませんが、横浜市内から撮ったにしては銀河の形がはっきり出ていると思います。
L-Quad Enhance フィルターは光害地でしか活躍しないと思われがちですが、SQM20台の郊外エリアでも十分力を発揮します。
これは L-Quad Enhance フィルターを装着して、SQM20.76の城ヶ島で撮影したHCG44銀河群です。

色がほんの少しだけオレンジ色に偏っている感じがありますが、銀河の色は綺麗に出ています。
フィルターを装着したことにより、城ヶ島でも無視できない光害の影響をかなりカットできたと思います。
銀河群・銀河団に対しても素晴らしいフィルターです。
欠点
ここまでべた褒めしてきましたが、Optolong L-Quad Enhance にはひとつも欠点がないわけではありません。
それは赤色の星雲がオレンジ色に傾いてしまうことです。
カメラにもよりますが、鮮やかなピンクや赤紫色が思ったように写らない場合があります。
その場合は別のフィルターか、フィルターなしで撮影するのがいいと思います。
とはいえ、ナローバンドフィルターの波長成分はすべてカバーしているので特別おかしな色になることはないと思います。
暗い場所で赤い星雲を撮る際には L-Quad Enhance フィルターを外すのがいいと思いますが、それ以外はつけたままでも問題なさそうです。
総評
今まで私は都会からではナローバンドでしか撮影できないと思い込んでいました。
しかしL-eXtremeを使って撮影すると露光時間を大幅に増やさなくてはいけなくなり、星の色が全部白っぽくなってしまいました。
ナローバンドの単調な色表現が嫌いで都会からの天体写真を諦めかけていたのですが、L-Quad Enhance との出会いにより価値観が一変しました。
UHCフィルターも試しましたが、星雲の色がおかしくなったのでやめました。
現状の光害カットフィルターの中では Optolong L-Quad Enhance が一番だと思います。
天体写真でスランプに陥っている人には試していただきたいフィルターです。
現在日本での知名度はまったくなく、主要な望遠鏡販売店でもほとんど取り扱われていません。
ですが海外のユーザーはすでに L-Quad Enhance のすごさに気づき始めています。
日本でもこのフィルターが広く手に入るようになればいいですね。
では。
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始めまして。岸野と申します。私は我孫子市のマンションに在住しています。光害の程度は測定していませんが、ボーテルスケールを見ると、7レベルと思います。範囲の狭い南のベランダから、星雲や星団、銀河をBKP130+ASI533Mc ProにCSL,QBPフィルターを使って撮影していますが、特に星団や銀河は色情報がほとんど得られず、生画像はオレンジ+茶色になります。私は、ステライメージ10とSirilのソフトを使っていますが、色情報はほとんど回復しません。ネットを回っていたら、こちらのHPにたどり着きました。optlong l-quadが星団、銀河の色情報が報告されていて、大変参考になりました。早速このフィルターを買うことにしました。ありがとうございました。
id:noshiki7337
岸野さん、コメントいただきありがとうございます。横浜市から星団や銀河が撮れたので、我孫子市でも全然大丈夫だと思います。使ってみた結果や困ったことなど、またいつでもコメントください。