冬になってオリオン座が昇ってくるようになりました。
天文ファンなら誰しもが撮るであろうオリオン大星雲。
双眼鏡を使えば眼視できるほど明るいのですが、周辺の分子雲まで出すのはなかなか難しいものです。
私のように首都圏の都会に住んでいるならなおさらです。
そこで今回は画像処理の力を借りて分子雲を表現することに挑戦してみました。
結果

Date: December 5, 2024
Location: @横浜市内の自宅ベランダ (SQM 18.60)
Camera: ASI294MC Pro (Gain 120, -10℃)
Telescope: WO Redcat51 (FL 250mm, f4.9)
Mount: Kenko SEII-J
Guiding: None
Filter: Optolong L-Quad Enhance
Exposure: 1sec x120 + 90sec x122 (185min)
Processing: PixInsight, BXT, NXT, Photoshop, Lightroom
予想以上に分子雲が出ましたね。
オリオン大星雲を取り巻く白い分子雲はもちろんですが周りの黄土色の分子雲もはっきり見えてます。
3時間弱と決して長くない露光時間でしたが満足する結果になってよかったです。
ノイズがざらざらしていますが、これは1秒のコマを合成する過程で出てしまったのかもしれません。
PixInsightのHDR合成のやり方が分からなかったのでPhotoshopで重ねてしまいましたが、別の方法も試してみる価値ありですね。
都会で撮影するときのアドバイス3つ
今回の成功の要因は3つあると思います。
1つ目はフラット補正にこだわったことです。
光害の状況を再現するため、望遠鏡に白い布をかぶせた状態で夜にフラットフレームを撮影しました。
10秒露光と15秒露光両方を撮影し、より補正できたほうを採用しました。
それにより強調処理に耐えられたのだと思います。
都会で撮影するならフラット補正は絶対に必要です。
時間がかかってもいいのでフラットが合う方法を見つけましょう。
2つ目はオリオン座が高く上がるのを待ってから撮影を開始したことです。
都会では低空になるほど光害の影響が顕著になります。
今回は高度が40度以上になってから撮影を開始しました。
下手に撮影枚数を増やすよりも、光害の影響をあまり受けていない良質なフレームをスタックするほうが作品の質は上がります。
結果的に枚数が少なくなっても良質なフレームだけを選びましょう。
3つ目は L-Quad Enhance フィルターです。
このフィルターは星や星雲の光を自然に出しつつ最大限光害をカットするように設計されています。
日本での知名度はあまりないかもしれませんが、海外のレビュー記事を見てみるとべた褒めされています。
このフィルターを使うようになってから格段に作品の質が良くなりました。
L-eXtreme のようなナローバンドフィルターは反射星雲や分子雲に対して効果がありません。
今回のように様々な星雲の色を出したい場合はナローバンドフィルターは避けたほうがいいでしょう。
白飛びトラペジウム
オリオン大星雲は輝度差が激しいので厄介です。
というのも、星雲の中心の白っぽい部分(トラペジウム)は星が高密度で集まっていてとても明るいです。
反対に、周辺の分子雲は自ら光っているわけではなくとても暗いです。
その激しい差を解決して1枚の写真に収めないといけません。
試しに90秒露光の写真だけを使って画像処理を進めていたら大変なことになってしまいました。

オリオン大星雲の上半分が白飛びしてますね。
これでは何がなんだかわかりません。
確かに周辺の分子雲はいい感じに出ているのですが、肝心のオリオン大星雲が白飛びしているようでは元も子もありません。
そこで1秒露光のフレームも加えることにしました。

すでにトラペジウムが写っていますね。
1秒露光でこれだけ写るほど明るい星雲はオリオン大星雲くらいしかありません。
本当は0.5秒露光とかでもよかったのですが、あまり短くしすぎるとリードノイズが大変なことになるのでやめました。
これらをPhotoshopで重ねてLightroomで仕上げたのが上の画像です。
撮って出し

90秒露光の撮って出しはこんな感じです。
すでに上の青いランニングマン星雲も写ってますね。
撮って出しでこれだけ写っていれば十分でしょう。

これは1秒露光の撮って出しです。
周辺の星雲は写っていないですが、明るいトラペジウムはちゃんと写ってますね。
輝度差が激しい対象を撮る場合は露光を変えて2種類撮ってみるのもいいかもしれません。
再処理してみた (2025/7/28)

PixInsightで再処理してみました。
こっちのほうがきれいかもしれません。
では。



















