天体写真をやっていると、次第にデジカメでは不便な場面が出てきます。
1つ目は普通のデジカメだとHα線がほとんど写らないことですが、これはカメラの内部フィルターを外す改造をすればHα線が写るようになります。
2つ目はfitsファイルで出力できないことですが、これはどうしようもできません。
カメラのRAWファイルと言ってもカメラ内部の様々な画像処理エンジンの影響を受けており、画像処理をする際に不利になる場合があります。
というわけで冷却CMOSカメラ、ASI533MC Pro を導入してみたのでレビューしていきます。
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外観とスペック
外観とスペックはこちらのページを見ていただけるとわかりやすいです。
外観はこんな感じです。


このグラフによると、Gainが100のときが一番ダイナミックレンジが広く、かつリードノイズも少ないみたいです。
Gainは常に100にしておくのがいいでしょう。
とはいえ、色々と難しそうな単語が並んでいてよく分からないですね。
実写画像を見てみるのが早いと思います。
実写画像
まずは撮って出しからです。

Gain 100, -10℃, 300s
これはNGC2903を5分間露光したときの撮って出しです。
見事にアンプグローが出ていません。
次にバイアス画像を見ましょう。

Gain 100, -10℃, 32μs
32μsで撮影したバイアス画像です。
縞模様(リードノイズ)が極めて少ないことがわかります。
この画像ではよくわかりません。
次にダーク画像を見てみます。

Gain 100, -10℃, 300s
5分間のダーク画像です。
こちらもパット見ではわからないくらいダークノイズが少ないです。
中心部を拡大してみましょう。

赤や緑、青のポツポツがダークノイズです。
拡大してもそこまで目立つほどではないと感じました。
最後にフラット画像を見てみましょう。

Gain 100, -10℃, 50ms
中央右下が少しだけ赤っぽい感じがします。
ですがこれをカメラの問題と決めつけることはできず、カメラに直接光源を当てたわけではないので原因がわかりません。
3ヶ月くらい使っていますが、これが原因でフラット補正が合わないという事態は一度も起きていないので大丈夫でしょう。
ASI294MC Pro を使っていたときにはフラット画像にムラが現れ、しかもフラット補正で補正しきれないという最悪の事態が発生しました。
今回はそのようなことは一切なかったのでとても助かっています。
これらを踏まえたうえでNGC2903の完成画像をお見せします。

Gain 100, -10℃, 300s x16
トリミングは一切していません。
変なノイズもなく、非常に画像処理がしやすいと感じました。

星雲でも変なムラが現れることはなく、ノイズも少ないので思った通りの画像が得やすいです。

星雲、星団、銀河となんでも撮れるのがこのカメラの大きな魅力です。
ではこのカメラは万能なのかというと、少し違うような気もします。
センサーサイズについて
天体写真では望遠鏡の焦点距離も大事ですが、カメラのセンサーサイズも大事です。
たとえば、フルサイズカメラのセンサーサイズは 35.9mm x 23.9mm の長方形ですね。
APS-C機となると 21.8mm x 14.5mm となります。
ここで、センサーサイズが大きいほど広い範囲を撮影することができます。
なのでフルサイズカメラのほうがAPS-Cカメラよりも広い範囲を撮影できます。
では ASI533MC Pro のセンサーサイズはというと、11.3mm x 11.3mm の正方形です。
APS-Cよりもさらに狭いセンサーになります。
そのため狭い範囲しか撮影できないのが ASI533MC Pro の弱点でもあり、強みでもあります。
わかりやすく説明してみます。
例えば、焦点距離が430mmの望遠鏡でオリオン大星雲を撮影したいと思ったとします。
フルサイズのASI6200MC Proを使用した場合はこうなります:

白い四角で囲われた範囲が写真になる部分です。
一方、ASI533MC Pro を使用した場合はこうなります:

フルサイズカメラと ASI533MC Pro では非常に大きな違いがあるのがわかります。
フルサイズカメラは非常に高いので使う人はあまりいないかもしれませんが、APS-Cカメラなら使う人は多いでしょう。その場合は

こんな感じになります。
画角計算はスマホアプリの Sky Guide (この機能には課金が必要です)やステラリウムなどでできます。
今持っている望遠鏡と組み合わせてどんな感じになるのか、一度シミュレーションしてみるといいでしょう。
簡単に言うと、広くて大きな星雲を撮りたい人には ASI533MC Pro は不向きです。
一方、小さい星雲や系外銀河を撮りたい人向けにはおすすめのカメラです。
撮りたい天体がどんな感じなのか想像して決めてみてください。
ちなみに、私は系外銀河が大好きなので ASI533MC Pro で満足してます。
系外銀河を撮りたい人、予算がそこまでない人にとっては ASI533MC Pro はおすすめです。
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