星の見かた

月明かりで星も天の川も見えない?星空観察や天体写真に与える影響とは

記事内に商品PRを含む場合があります

夜空を見上げたとき、「星が少ないな」と感じた経験はありませんか?

その原因のひとつが「月明かり」です。

特に星空観察や天体写真では月の存在が空の暗さに大きく影響します。

この記事では月明かりが星や天の川に与える影響、月齢ごとの違い、そして影響を抑えるための工夫について実体験を交えて丁寧に解説します。

月明かりが星を隠してしまう理由

まず、どうして月がいるだけで星が見えづらくなってしまうのでしょうか。

それは、「月が明るすぎるから」です。

月が明るすぎて夜空全体の明るさも上がってしまい、その明るさに星が埋もれてしまうということですね。

実際、満月の視等級は-12.7等級ほどで、次に最も明るい金星(の最大の明るさ)の-4.5等級より遥かに明るいです。

なので満月は金星のおよそ1400倍ほど明るいということになります。

金星ですら薄明の空のオレンジ色の中で見えるくらい明るいのに、その1400倍なので想像を絶する明るさです。

実際、都会でも満月の夜には月で影ができます。

街明かりもない田舎では月がどれほど明るいか、想像できると思います。

だから「月がいるときに星を見に行ってはいけない」と言われるわけです。

天の川を見たいなら月がいる時期はダメ!

「暗い場所で満天の星を見たい」という人も多いと思いますが、「天の川を肉眼で見たい」という人も多いでしょう。

ですが、天の川は星の光よりも遥かに淡いです。

等級で言えば、5等級の星より暗いと言ってもいいでしょう。

ですが、夜空に月が輝いていると天の川の極めて淡い光がかき消されてしまいます。

4等級までの星が見えていても天の川は見えないくらい、天の川を見ることは難しいことなんです。

なので天の川を肉眼で見る目的であれば月がいない時期か、月が地平線の下に沈んでいる時間を狙いましょう。

新月前後であれば一晩中天の川が見れますが、半月までであれば月が隠れる時間があります。

上弦の月(右半分が光っている状態)であれば、夜中に沈むので沈んでからがチャンスです。

反対に、下弦の月(左半分が光っている状態)であれば夜中に月が出てくるのでそれまでがチャンスです。

家族旅行などで夜中まで起きているのがしんどい場合は下弦の月のシーズンを狙うといいでしょう。

また、満月は一晩中夜空にいるので絶対だめです。

満月前後の時期は天の川は見られないと思いましょう。

月齢と月の明るさの関係

ここで、月の満ち欠けと面白いデータを話そうと思います。

月には満ち欠け(フェーズ)があって、具体的にはこんな感じです。

新月

三日月(上弦)

上弦の月

十三夜月(半月より少し膨らんでいるが満月ではない)

満月

十七夜月(満月が少し欠けている)

下弦の月

三日月(下弦)

新月

こんな感じで、月はおよそ30日周期で満ち欠けを繰り返しています。

星を見に行くなら新月前後の一週間が理想ですが、予定や天気が合わないこともありますね。

そんなときは、新月を含む半月から半月までの2週間の間を狙うといいでしょう。

「半月っていっても満月の1/2の明るさなんでしょ?」と思われるかもしれませんが、なんと半月は満月の1/10くらいの明るさなんです!

これには色々理由があるらしく、月に正面から光が当たると鏡のように明るく輝くかららしいです。

なので半月は満月に比べればそこまで大したことはないというわけです。

ただ、半月から少し膨らむと急に明るくなるので気をつけてください。

なので、三日月が地平線の近くにいるくらいであれば天の川は見えるでしょう。

私も野辺山で三日月の下で星空を眺めていましたが、月はすぐに沈んでいきました。

半月は満月と違ってすぐに沈む(もしくはしばらく出てこない)ので、天の川を見れるチャンスもあります。

「新月前後は天気が悪い…」と諦めていた人も、2週間の間であれば狙えるのではないでしょうか。

もちろん新月前後の1週間が理想ではありますが、天気が悪い中行くよりかは遥かにいいです。

月の光は方向がある。都市の光とは違う

また、月の光はひとつの方向からしか来ません。

なので月が南にいる場合、北の空は暗い場合があります。(満月はやばいですが)

少なくとも半月までの明るさで月がそこまで高くない場合、天頂や反対側の空は暗い場合がほとんどです。

なので、天の川ではなく満天の星が見たいだけの場合は月がいてもそこまで影響がない場合が多いです。

もちろん月の近くの星はかき消されてしまうでしょうが、反対方向を見れば輝く星々を見ることができます。

反対に、都会や市街地の街明かりは地表からやってきます。

月とは違い、地表から上がってきた光は大気中で散乱し空を明るくしてしまいます。

しかも月のように決まった方向がないため、街明かりのせいで空全体がぼんやりと黄色っぽくなるという現象が起きてしまいます。

なので都会では星はほとんど見えないんですね。

これを光害(ひかりがい)と言います。

「都会に住んでいて星が全然見えない」という人の場合、多少の月があっても暗い場所に行ったほうが星は絶対多く見えます。

天の川は厳しいかもしれませんが、それでも普段見ているより遥かに多くの星が見えるはずです。

天体写真では月から離れた方向なら影響は小さい

星空観察だけでなく、天体写真でも月は厄介者です。

月のせいで、天体ファンは1ヶ月のうち1週間ほどしか星を撮れるチャンスがありません。

しかし、それももう過去の常識なのかもしれません。

先ほども言いましたが、半月は満月の1/10未満の明るさしか持っていません。

なので、半月から半月までの2週間を使えばチャンスは2倍に増えます。

「月がいる時点でいい写真なんて撮れないでしょ」と思われるかもしれません。

ですが月の座標を事前に計算し、最低でも月から60°以上離れた天体だけを撮ることで影響はほとんど抑えられます。

撮る天体を自由に選べなくなるかもしれませんが、それでも撮れないよりかは遥かに楽しいでしょう。

特に新月前後の天気が悪い場合、半月までは許容してみてはいかがでしょうか。

[実体験]月齢8の月のもとで星空観察してみた

実はこの前、月齢8の月がいる中で野辺山に行ってきました笑

梅雨前で天気が不安定な中、たまたま2日連続で晴れそうだったので民宿を予約しました。

ただ、月齢カレンダーを調べてみたらすでに上弦の月を過ぎた段階でした。

「これは行くだけ無駄かな…」と半ば諦めモードでした。

現地に着いて夜になるにつれ頭上の月がどんどん輝き出し、地面に影を落とすほどになりました。

ですが太陽が沈みきってしばらくしたとき、空を見上げると満天の星が広がっていました。

月の近くのおとめ座やからす座はほぼ見えませんでしたが、少し離れたおおぐま座やりゅう座、こと座やはくちょう座などを肉眼ではっきり見ることができました。

こと座の4等星が見えたときはすごく感動しました。

ただ、天の川の方向を見ても光の帯は見えませんでした。

天の川は何回も見ているので「やっぱり無理か」と諦めました。

ただ、1時前に月が沈むと夜空はどんどん暗くなっていき、見える星の数が明らかに増えていきました。

そして月が沈んで10分くらいしたとき、天の川の方向を見るとはっきりと光の帯を見ることができました。

この写真はミラーレスカメラの10秒露光の撮って出しです。

いて座方向の天の川の中心部だけでなく、はくちょう座付近のもやもやもはっきり見ることができました。

「月が沈めば天の川は見えるんだな」と思った瞬間でした。

また、そのとき天体写真も撮っていました。

月齢8の月から49°ほど離れた銀河の写真がこちらです。

半月より明るい月が横にいるなか、ここまでの写真が撮れるとは思っていませんでした。

工夫次第ではなんとかなるものですね。

ただ、その翌日の月は月齢9になってしまいました。

そのときの写真はあまり使い物にならず、かなり残念でした。

半月を過ぎたらどんどん月が明るくなるというのは本当のようですね。

満月はやばい

ここまで「半月までならなんとかなる」と話してきましたが、満月はどうにもなりません。

横浜市の自宅ベランダで天体写真を撮っていても、満月が近くにいるだけで写真が崩壊するのがわかります。

都会ですら満月は破壊的なので、暗い場所に行ったら眩しすぎて目がくらんでしまうでしょう。

そんな状況では暗順応もできず、本来見えるはずの星も見えなくなってしまいます。

なので満月前後の2週間は避けてください。

そんな時期に無理やり行っても意味がない場合がほとんどです。

満月の間は星空観察はお休みにして別のことをするのがよさそうです。

最後に

ここまでで月の満ち欠けと星空観察の関係性を書いてきました。

理想は新月前後の1週間ですが、半月のときでも月が地平線の下にいる時間が必ずあります。

そのときを狙って天の川を見るのもありですね。

新月期になかなか晴れなくて星空を見に行けないときは半月まで許容してみてはいかがでしょうか。

では。

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です