秋の天体といえばアンドロメダ銀河ですね。
「肉眼でも見える」と聞いて見に行ったものの、「何も見えずがっかり…」となることも多いですよね。
「写真だとあんなにきれいなのに、どうして肉眼だとしょぼいの?」となるのではないでしょうか。
そこで今回、どうすればがっかりせずに感動的なアンドロメダ銀河を見れるかを解説していきます。
ぜひ最後まで読んでみてください。
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アンドロメダ銀河ってどんな天体?
アンドロメダ銀河は地球からおよそ250万光年の彼方にある巨大な渦巻銀河で、私たちの太陽系が属する天の川銀河のお隣に位置しています。
写真に撮るとこんな感じです。

写真で見ると本当に綺麗ですね。
条件が整えば肉眼でも見ることができる唯一の渦巻銀河として知られていて、古くから多くの天文学者や星空ファンに注目されてきました。
アンドロメダ銀河はその大きさにおいても際立っています。
直径はおよそ22万光年と言われていて、天の川銀河(およそ10万光年)よりも遥かに大きいです。
私たちの天の川が含まれている銀河の集団、局所銀河群に属する銀河のなかで最大の存在です。
この局所銀河群には天の川銀河、大マゼラン雲、小マゼラン雲、さんかく座銀河などの様々な銀河が集まっています。
では、アンドロメダ銀河の「アンドロメダ」とはどういう意味なんでしょうか?
アンドロメダとはアンドロメダ座という星座のことで、ギリシャ神話では鎖に繋がれた王女のことです。
アンドロメダ座にあるからアンドロメダ銀河と言われるんですね。
アンドロメダ座はペガスス座の隣に位置する秋の星座で、W字型が特徴的なカシオペヤ座や、四角いペガススの大四辺形を目印に探すと見つけやすい星座です。

ただ、実際に観察できるアンドロメダ銀河の見た目はあくまで「淡くてぼんやりとした楕円形の光」といった印象です。
それに対して、ネットや本に載るような多くの写真は明るい円盤がはっきり写っています。
こんな感じでしょう↓

こうした写真は望遠鏡で長時間露光し、画像処理を加えて構造や色を強調したものです。
なので肉眼で上の写真のような姿を直接見るのは無理です。
しかし、写真よりしょぼくても実際に肉眼で見ると「本当に存在していたんだ!」と驚くことも多いです。
夜空に輝く明るい星々は、せいぜい地球から数百光年の距離にいます。
アンドロメダ銀河はその1万倍以上の距離にありながら、条件さえ整えば私たちの裸眼で観測できるのです。
いかにアンドロメダ銀河が巨大かわかりますね。
歴史的にもアンドロメダ銀河は重要な意味を持っています。
かつては「アンドロメダ星雲」と呼ばれ、天の川銀河内にある星雲の一種と考えられていました。
しかし1920年代、天文学者エドウィン・ハッブルによる観測によって、アンドロメダは天の川銀河から遥か彼方にある別の銀河であることが判明しました。
この発見により宇宙は私たちの銀河だけで構成されているという考えは覆され、「銀河宇宙論」へと大きく舵を切るきっかけとなりました。
現在では、宇宙にはアンドロメダ銀河のような銀河が2兆個以上存在すると推定されています。
このように、アンドロメダ銀河はきれいなだけではなく天文学者も注目する天体なんです。
アンドロメダ銀河は3.4等級だけど暗い
星空の初心者向けガイドなどを見ると、「アンドロメダ銀河は肉眼で見える」と書かれていることがあります。
実際、アンドロメダ銀河の見かけの等級は約3.4等級です。
これは多くの人が肉眼で見える明るさの限界である6等級よりもはるかに明るいです(等級が小さいほど明るくなる)。
「じゃあ満天の星空の下ならパッと見えるのでは?」と思ってしまうかもしれません。
ですが実際に見てみると、「どこにも見えない」「探せたけど、ただのボヤッとした雲のような光」「え?これだけ…?」とがっかりする人が非常に多いのが現実です。
その理由は、天体の明るさを評価する指標として一般的な等級だけでは測れない、ある重要な指標があるからです。
それが表面輝度です。
わかりやすく解説します。
表面輝度ってなに?
表面輝度とはある天体が単位面積あたりにどれくらいの明るさを持っているかを表す指標で、単位は等級/平方秒角(mag/arcsec²)で表されます。
つまりは明るさの密度のようなものですね。
この値が小さいほど明るく、見やすくなります。
これは星のような点光源ではなく、銀河や星雲のように広がった天体(面光源)を見るときに非常に重要な概念です。
たとえば、3等級の星は空に一点で輝きます。
そのすべての光がピンポイントに集中しているため、非常に明るく見えます。
3等級の星と銀河では全体の明るさは同じですが、密度でいえば銀河のほうが圧倒的に暗いんですよね。
アンドロメダ銀河の表面輝度はなんと22.3mag/arcsec²
具体的な数値で見てみましょう。
アンドロメダ銀河は全体としては3.4等級と明るいですが、その光は約3度(およそ満月6個分)にも及ぶ広大な範囲に広がっています。
結果として1平方秒角あたりの明るさ、つまり表面輝度はなんと22.3mag/arcsec²程度とされています。
この数値、実は非常に淡いです。
比較としてよく挙げられるのが、オリオン座の中にある有名なオリオン大星雲です。
こんな感じのやつです。

この星雲の明るさはおよそ4.0等級とアンドロメダ銀河よりほんの少し暗い数字ですが、中心核の表面輝度は約17.0mag/arcsec²ほどと、非常に明るいです。
17と22の差はわずか5等級ですが、天文学の世界では1等級ごとに2.5倍の明るさの差があります。
つまり、5等級の差はおよそ100倍もの明るさの違いになるんですね。
どうしてこんなに大きな差になるのでしょうか?
オリオン大星雲は中心部の光が狭い範囲に集中していて、人間の目にとっても非常に見やすい構造をしています。
色も肉眼で感じ取れるほどの白さがあり、空が少し暗ければその存在をはっきり認識することができます。
一方アンドロメダ銀河は全体としては非常に明るいものの、その光があまりにも広い領域に薄く分散してしまっています。
なので光害や月明かりのある場所では背景にすぐ埋もれてしまうのです。
写真では明るく見えるのに、肉眼では「雲のシミ」?
アンドロメダ銀河がインスタやブログに掲載されるとき、たいていは長時間露光で撮影されてノイズが抑えられています。
さらに、そのノイズが少ない画像をゴリゴリに画像処理してコントラストや彩度を引き上げているんですね。
その結果、渦巻き構造や色彩がくっきりと浮かび上がっていて非常に鮮やかな天体のように見えます。
ところが実際に肉眼で見ると、見えてくるのはせいぜい中心核のぼんやりした楕円形の光だけです。
写真とのギャップに驚き、がっかりする人も少なくありません。
しかしこれはあなたの目が悪いのではなく、天体の構造上そう見えてしまうだけなのです。
明るさと見えやすさは同じではない
アンドロメダ銀河が「3.4等級なのにがっかりするほど見えない」と言われる理由は、全体の明るさが広い面積に広がってしまっているからです。
つまり、「天体の全体の明るさ」と「実際に肉眼で見えるかどうか」には大きなギャップがあるということですね。
アンドロメダ銀河を見るためには、とにかく暗い空と根気強さが必要です。
肉眼では見えないこともしばしばあります。
そんなときは双眼鏡や望遠鏡を使いましょう。
双眼鏡や望遠鏡は人間の目よりもはるかに多くの光を集めることができます。
大きな望遠鏡(口径20cmくらい)を使えば、きっとすごいアンドロメダ銀河の姿を見ることができるはずです。
すごい姿を見たいなら大きな望遠鏡を使おう
アンドロメダ銀河を肉眼で見たとき、多くの人が「これがあの有名な銀河?」とがっかりするのはよくある話です。
それどころか、肉眼ではまったく姿が見えないこともよくあります。
しかし、アンドロメダ銀河は大きな望遠鏡を使って観察すると、巨大な銀河の構造がよく見えてくるんです。
小さな双眼鏡では見えるのはぼんやりとした光の塊
まず前提として、双眼鏡や小型望遠鏡(口径60mmくらい)でもアンドロメダ銀河は見えます。
肉眼に比べればはっきりアンドロメダ銀河の姿を見ることができるでしょう。
特に光害の少ない場所で空を見上げれば、楕円形に広がる銀河の中心部がしっかり視野に入ってくるはずです。
天体観察の入門として素晴らしい体験です。
しかし、小さな双眼鏡だけでは見えてこない構造もあります。
口径20cm以上で初めて見えてくる本当の姿
本格的にアンドロメダ銀河の姿を楽しむなら、口径20cm以上の望遠鏡をおすすめします。
たとえばビクセンのR200SSやセレストロンのC8, スカイウォッチャーの200PDSなどがあります。
このクラスの望遠鏡を使えば、ただの光の塊ではなく
- 明確な楕円構造
- 銀河円盤の淡い広がり
- 中心核のきらめき
- M31の伴銀河であるM32やM110との共演
といった、複雑な構造を持った銀河の姿が視野に現れてきます。
特に空が暗ければ外周部のぼんやりとした広がりまで見えてきて、まさに宇宙を目で見る感動に包まれるでしょう。
渦巻き構造は見えるのか?
ここで気になるのは、「写真で見るような渦巻き模様が望遠鏡でも見えるのか?」という点です。
結論から言うと、渦巻き構造はほのかに見える程度でしょう。
M31は私たちの天の川銀河に対して斜めに傾いた角度で存在しているため、真正面からの渦巻き模様は見えません。
視野に映るのは、どちらかというと銀河の円盤を斜めから見たような楕円形の広がりです。
真正面からの渦巻きが見えるIC342はこんな感じです↓

一方、アンドロメダ銀河はこんな感じです↓

アンドロメダ銀河は少し傾いていますよね。
なので正面からの渦巻きは見れません。
ただ、望遠鏡の口径が大きくなればなるほど微妙な光の濃淡や、帯状の暗黒帯などが見えてきます。
これらは渦巻きの腕に対応する部分で、アンドロメダ銀河が構造を持つ天体であることが視覚的に実感できるようになります。
電視観望なら生の姿に近づける
最近では電視観望(電子観望)という方法も注目されています。
簡単に言うと、カメラを通してモニターに表示された銀河の姿を見ようというものです。
肉眼では捉えられなかった微光部分や色彩が画面上に現れ、まるで写真のような天体をライブ画像として楽しむことができます。
アンドロメダ銀河も電視観望を使えば腕の構造や色の違いまで見えてくるのでいいですね。
しかも写真撮影ほどの手間もなく、リアルタイムで感動を共有できるという点で家族や友達との天体観測にもぴったりです。
また、最近はSeestarというスマート望遠鏡もあります。
ただぽんと置くだけでスマホ経由で撮影してくれるすぐれもので、スマホの画面でアンドロメダ銀河の姿を楽しむことができます。
あまりにも手軽に写真が撮れると、いま天文界隈で話題沸騰中です。
気になったらぜひ製品ページをのぞいてみてください↓
最後に
ここまででアンドロメダ銀河の話をしてきました。
アンドロメダ銀河は思った以上に暗く、肉眼では見えづらい天体です。
ただ、いまは便利な道具がたくさんあります。
自分の目でアンドロメダ銀河の巨大な姿を見たい人には大きな望遠鏡を、手軽にスマホでアンドロメダ銀河の生の姿を見たい人には Seestar S50 をおすすめします。
肉眼では見えなくても、道具を使って見れればそれでいいんです。
機会があれば暗い場所まで出かけて、アンドロメダ銀河の姿を見てみてください。
きっと一生忘れられない体験になるはずです。
では。



















