アンドロメダ座

ポータブル赤道儀とオールド望遠レンズでアンドロメダ銀河を撮りました

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天の川の撮影に使うようなポータブル赤道儀では天体写真は撮れないと言われています。

実際、銀河や星雲を拡大して撮るような天体写真で使う赤道儀はプロ仕様の重くて大きいものがほとんどです。

私が使っているケンコーのSEII-J赤道儀はマウント部分が10kgあり、三脚と合わせて15kgを超えます。

一方、ビクセンのポータブル赤道儀 Polarie U は本体がおよそ575gで、三脚と合わせても1.5kgくらいです。

SEII-Jを片手で運ぶことはまず不可能ですが、Polarie U であれば片手で運んで気軽にセットできます。

天体写真を始める大きな障壁となっているのが赤道儀です。

多くの赤道儀は重すぎて電車やバスで運ぶことができません。

そのため天体写真を撮りに出かけるとなると多くの人が車を出して遠征していますが、夜に車を運転して機材をセットするのはとても疲れます。

もっと天の川を撮るみたいにカジュアルに天体写真を撮れないのか…

そんな発想で今回の企画を試してみることにしました。

使う機材

今回使う機材はカメラが Nikon Z6 II, レンズが Sigma 400mm F5.6 Mirror, 赤道儀が Vixen Polarie U です。

カメラは25万円と高額ですが、レンズは40年前のものでメルカリで1万円で買いました。

ポラリエUも6万円と赤道儀の中では安い部類です。

普通アンドロメダ銀河を撮ろうと思ったら高いCMOSカメラに高い望遠鏡、そして高い赤道儀が必要になります。

CMOSカメラを制御するにはASIairまたはPCが必要になりますし、望遠鏡や赤道儀は大きくて片手では運べません。

ですが、今回の方法では普段使いにも適しているミラーレスカメラに6万円の小さな赤道儀を足すだけでアンドロメダ銀河が撮れます。

利点は値段だけではありません。

圧倒的に軽いことにより普段の旅行にもカジュアルに持っていけるようになります。

ちょっとした家族旅行でも天体写真が取れると考えたらすごいですよね。

でも問題は写真のクオリティです。

これに関しては実際の結果を見ていただきましょう。

結果

Camera: Nikon Z6 II
Lens: Sigma 400mm F5.6 Mirror
Mount: Vixen Polarie U
Mount Adaptor: Shoten FTZ
Filter: N/A
ISO: 25600
Exposure: 30sec x90
Processing: PixInsight, Crop

まずは悪い点から。

明るい星の周りにドーナツ状の円が2つできてしまっています。

これはオールドレンズの影響で、昔の反射レンズであるためにこのような現象が起きてしまいました。

もしかしたら光軸がずれてしまっているかもしれません。

これに関して言えばさらにいいレンズを使うことによって解決できます。

ですが望遠レンズにありがちな色収差やコマ収差はほとんど見られず、1万円のレンズにしては素晴らしい写りをしてくれたと思いました。

撮るときのコツ

気をつけるポイントは5つあります。

極軸合わせ

Polarie U は本来素通し穴に北極星を目視で入れることにより極軸合わせを行う設計となっています。

天の川を撮るときはそれでもいいのですが、今回のように超望遠レンズでそのような極軸の合わせ方をすると間違いなくブレブレになります。

素通し穴の精度はそこまでよくありません。

望遠レンズを使うときには全く役に立たないと言っていいでしょう。

そして、北極星(ポラリス)と天の北極は厳密には違う位置にいます。

このような感じです。

なので、厳密には北極星の近くにある極軸に合わせないといけないのです。

そこでどうするかというと、私は星図アプリのSkyGuideのPro版を使いました。

使い方は簡単で、赤道儀とスマホを同じ向きに固定し星図アプリを起動、そして「天の北極」と検索してコンパスで向きを合わせるだけです。

「そんなんで本当に極軸が合うの?」と思われるかもしれませんが、試してみたところ非常に精度が高く Polarie U でも十分追尾ができました。

私の場合はこれでうまくいきましたが、もしうまくいかなかったら極軸望遠鏡を試してみてください。

極軸望遠鏡とは北極星の位置を手がかりに天の北極を中心に入れられる小さなファインダーのようなものです。

季節によって北極星と天の北極の位置関係は決まっているので、それを手がかりに極軸を正確に合わせることができます。

Polarie U 用の純正極軸望遠鏡も別売りで売っているので試してみてください。

導入

次に導入ですが、これは2つの方法があります。

1つ目が星図アプリです。

先程同様、SkyGuideのコンパス機能により天体の位置を正確に知ることができます。これをカメラのほうに付け替え、「アンドロメダ銀河」と検索し向きを合わせれば一瞬で導入できます。

もう1つがスターホッピングです。

星図を見ながら目印となる星を順番に追いかけていくことで導入していきます。

ピントを合わせたうえでカメラのライブビューを見ながら目印となる星をたどっていくと導入できます。

ここで、カメラのライブビューは露光時間を30秒にしたうえでISOを高感度にしないと星が映らないので注意してください。

絞りと露光時間とISO

絞り関連ですが、屈折レンズの場合絞り開放だと収差が盛大に出ます。

例えばf2.8の400mm望遠レンズの場合、f4かf5.6くらいまで絞ると星がシャープに映るのでおすすめです。

また、露光時間は30秒くらいがいいでしょう。

1分以上の露光時間で本格的に撮りたい場合はプロ仕様の望遠鏡と赤道儀を使ってください。

ISOはヒストグラムのピークが中央くらいになるところで合わせます。

私の場合は f5.6, 30秒, ISO25600 で撮りました。

また、ホワイトバランスは必ずオートにしてください。

オートにしないと色味がおかしくなりあとで補正するのが大変になります。

補正フレーム

いちばん大事なことですが、必ずフラットフレーム、ダークフレーム、そしてバイアスフレームを撮ってください。

簡単に言えば、フラットフレームは周辺減光やゴミを補正するため、ダークフレームは熱ノイズを補正するため、バイアスフレームは読み出しノイズを補正するための画像です。

フラットフレームは均一に光が当たっていて模様がない壁にカメラを向けて撮影時と同じレンズ、同じ絞り、同じISOで露光時間を調整して撮影した画像を使います。

ヒストグラムが撮影時のものと近づくようにシャッタースピードだけを調整してください。

撮った画像は中心が明るく四隅が暗い画像になるはずです。

ダークフレームは撮影時と同じ露光時間、同じISOでレンズを取りカメラに蓋をした状態で撮影した画像を使います。

真っ黒な画像が得られると思いますが、赤や青のポツポツが写っているはずです。

これが熱ノイズです。

できれば撮影時と同じ気温で暗室で撮影するのが理想ですが、大体でも構いません。

バイアスフレームは撮影時と同じISOでレンズを取り、蓋をして露光時間0秒(もしくは1/8000秒のような最短のシャッタースピード)で撮影した画像を使います。

これも真っ黒な画像に思えるかもしれませんが、実際には読み出しノイズが映っています。

フラット、ダーク、バイアスともに大体100枚ずつ撮っておくといいでしょう。

画像処理

最後に、今回の画像処理ではPixInsightを使いました。

天体写真用の画像処理ソフトで、非常に高性能で使い勝手がいいので気に入っています。

詳しい画像処理のコツなどは別の記事を見てみてください。

最後に

今回はポータブル赤道儀と望遠レンズでアンドロメダ銀河を取る方法を紹介しました。

本格的な機材で撮る天体写真も楽しいですが、工夫して撮る天体写真も同じくらい楽しいです。

この記事が色んな人の天体写真の助けになればいいと思っています。

それでは最後まで読んでくださりありがとうございました。

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