天体写真

望遠鏡の結露対策まとめ:私の実体験とおすすめ装備も紹介!

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冬の天体撮影ではもちろん、夏でも標高の高い場所や湿度の高い夜には結露との戦いが避けられません。

私自身、結露のせいで天の川のコマを全滅させたことやガイド鏡が曇って撮影がボツになったこともあります。

この記事では、望遠鏡・レンズ・ガイド鏡・カメラ・PCなどあらゆる機材の結露対策について、私の実体験を交えながら徹底的にまとめます。

ぜひ最後まで読んでみてください。

結露するとどうなる?

結露は望遠鏡の性能を直接破壊するトラブルです。

しかも気づかないうちに静かに進行し、すべてを台無しにするという厄介な性質を持っています。

では、実際に結露が起こるとどんな影響があるのでしょうか?

以下に具体的な例を挙げながら詳しく解説します。

ピントが合っていても星がぼやける

結露が発生するとレンズや補正板、センサーの前面に極小の水滴が無数に付着します。

これにより光が散乱して星像が滲み、ぼやけた写真しか撮れなくなります。

ピント合わせ中はまだ結露していなかったのに、露光中に曇ってくることもあるため「後から画像を見てガッカリ…」というパターンが非常に多いです。

オートガイドが崩壊する

ガイド鏡が曇ると、ガイドソフトが星を見失って補正が効かなくなります。

その結果追尾エラーが発生し、せっかくの撮影コマが全部ブレて使いものにならなくなります。

特にカセグレンなど、焦点距離の長い望遠鏡を動かしているとオートガイドなしでは一瞬でブレブレになります。

ガイド鏡が小さいと冷えやすく、本体より先に曇るケースが多いので要注意です。

私も2月の野辺山でガイド鏡が曇られました。

CMOSセンサーが曇るとリカバリー不能

冷却カメラを使っているとセンサー内部に結露が発生することがあります。

この場合は撮影中の画像に黒いもややパターンノイズが現れるだけでなく、場合によってはセンサー表面に結晶化した跡が残ることすらあります。

しかもセンサー内部の曇りは目視では非常にわかりづらく、すべて撮り終わってから画像を見て初めて気づくことが多いです。

詳しい対策はこちらの記事でも解説してます。

装備に水滴が残るとカビ・腐食・ショートの原因に

結露を放置したまま片付けると主鏡やレンズにカビが発生したり、赤道儀やカメラの端子が腐食することがあります。

また、電子機器の通電中に水分が内部に入り込むと最悪の場合ショートして故障することもあります。

「今日は結露したけど撮れたからOK」ではなく、機材の安全のためにも結露したら即座に対応する意識が大切です。

「すべて撮れてる」と思ったら全滅に

結露の一番厄介なところは、気づかないまま進行してしまうことです。

ピントも露出も完璧、星の位置も美しい……

そう思っていたのに、帰宅後にライトフレームを開くと全部がぼやけていた!!

そんな悲劇が現実に起こります。

私自身、乗鞍でレンズが曇って星景写真が台無しになりました。

結露は撮影失敗の最大要因

光害が多少強くても、ピントが少し外れていてもなんとかなります。

ただ、結露でにじんだ画像はもう終わりです。

だからこそ結露対策は「寒いときだけのオプション」ではなく、常に意識しておくべき最重要事項なんですね。

なぜ結露するのか?

結露はただ寒いから起きるわけではありません。

正しく理解することでどんなときに危険があるのか・どうすれば防げるのかが見えてきます。

ここでは天体写真の現場で結露が起きる3つの主な原因を詳しく解説します。

空気と鏡筒の温度差

空気中には常に水蒸気(湿度)が含まれていて、その空気が冷やされると水蒸気が凝結して水滴になるという現象が「結露」です。

特に、機材が空気よりも冷えていると表面に水滴が付着しやすくなります。

この「結露が発生する温度」のことを露点といいます。

たとえば気温が10℃で湿度が80%の場合、露点は約6.5℃です。

つまり、鏡筒やレンズが6.5℃以下に冷えると曇るのです。

反射望遠鏡や金属筐体の冷却カメラは熱が逃げやすいため、外気より早く冷えて露点を下回りやすいのが特徴です。

湿度の高さ

湿度が高いほど空気中に含まれる水分が多く、露点に達しやすくなります。

たとえ気温がそれほど低くなくても、湿度が高ければ簡単に結露します。

特に以下のような状況は要注意です:

  • 前日雨が降った直後の晴れた夜(湿度90%超)
  • 森林や田んぼなど水気の多いロケーション
  • 海沿いのスポット(潮風は塩分+湿気)

気温だけ見て「大丈夫」と思わないことが大切です。

夏でも湿度が高いと簡単に結露します。

放射冷却

天体写真においては放射冷却が結露の一番の原因でしょう。

晴れて風のない夜、地表や鏡筒は熱を宇宙空間に放射し続けるため周囲の空気よりも急速に冷えます。

これにより、外気温よりも5℃-10℃近く機材の表面温度が下がることもあります。

私の経験では6月の野辺山で外気温が5℃、鏡筒は氷点下まで冷え込んでいたことがありました。

見た目は晴れて快適でも、内部では凍えるような冷却が進行しているのです。

冷却カメラは特に危険

ZWOなどの冷却CMOSカメラではセンサー自体を-10℃や-20℃に冷やすため、周囲との温度差が極端になりがちです。

これによりセンサー表面が結露→パターンノイズ発生、画像ボツという事態も起こり得ます。

なので私は冷却温度を冬季は-10℃, 夏季は0℃と決めています。

一回-20℃までカメラを冷やしたことがあるのですが、パターンノイズが強烈になって直らなくなりました。

みなさんも冷やし過ぎには気をつけましょう。

気温だけでなく湿度と冷え方がカギ

  • 結露は温度差 × 湿度 × 放射冷却のトリプルパンチ
  • 「外気温は高いから大丈夫」は通用しない
  • 夏でも標高が高い・風がない・湿度が高い夜は危険

だからこそ、結露の仕組みを理解したうえで事前のヒーター対策や断熱が重要になります。

結露させない方法(カメラレンズ・屈折望遠鏡編)

ここからは望遠鏡を結露させないために私が実際に行っている方法を紹介します。

まずはカメラレンズ・屈折望遠鏡の場合から紹介します。

カメラレンズや屈折望遠鏡は構造的に空気との温度差が生まれやすく、結露しやすい光学系です。

しかもレンズが曇ると星像は即座に滲み、構図や露出が完璧でも一発アウトになるのが怖いところですね。

レンズヒーターを必ず装着する

結露対策の基本中の基本がこれです。

レンズの前玉や補正レンズ周辺をほんのり温め、露点を下回らせないために使用します。

ポイントは

  • 撮影開始前からONにしておく(曇ってからでは遅い)
  • 常に出力はHigh(最大)で使用する
  • ヒーターはレンズ周囲を均等に温められるよう密着させる

です。

電源をケチって出力を弱めないようにしましょう。

私がおすすめしている機種はこれです。

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Coowooのレンズヒーターは長いのでカメラレンズや望遠鏡全般に使えます。

一方、SVBonyのレンズヒーターは短いので小さなガイド鏡に巻き付けるのに便利です。

私はCoowooだと長すぎて負けませんでした。

なのでCoowooを2本、SVBonyを1本持っておくといいでしょう。

私はこれらを4本使い分けて運用しています。

冗談ではなく、本当に全台数分必要になる夜があります。

筒先フードや断熱材で放射冷却を防ぐ

夜間は機材が宇宙空間に熱を放出することで急冷されます。

フードを装着することで空に向かう放熱を緩和し、結露までの時間を延ばせます。

望遠鏡にはたいていフードがあるので必ずつけましょう。

ない場合は買うか自作するかしかありません。

温度差を急激に作らない

機材をいきなり外に出して冷やすと結露が一気に発生しやすくなります。

そのため、望遠鏡は日没前から屋外に出して外気に慣らしておくのが鉄則です。

また、冷却CMOSカメラを使う場合も温度設定は-10℃程度にとどめ、段階的に冷やすことで結露リスクを下げられます。

望遠鏡を室内に持ち込む際も急な温度差を作らず、少しずつ気温差に慣らすことで結露が防げます。

電源には余裕をもつ(出力が弱いと効果ゼロ)

レンズヒーターを複数使用する場合、電力不足で出力が落ちると意味がありません。

特に冷却CMOS,赤道儀やPCを同時に動かしていたら冬は電源が足りません。

そこで私がおすすめするのが EcoFlow RIVER 2 Pro です。

用量が768Whもあり、冬場に13時間以上連続稼働しても朝見てみたら40%以上残っていました。

EcoFlow RIVER 2 Pro は今では私の頼れる相棒です。

詳しいレビューは別の記事にまとめました。

私の経験では「ヒーターをHighにすると電源が朝までもたないからMidで…」という判断が最悪の選択でした。

出力を弱めたらあっという間にレンズが曇り、撮影中断になりました。

ヒーターは最大出力で動かしてこそ意味があります。

結露させない方法(反射望遠鏡編)

次に紹介するのが反射望遠鏡です。

細長くてスリムな屈折望遠鏡に比べ、反射望遠鏡は全面がむき出し(もしくは補正板)でめちゃくちゃゴツいのが特徴です。

色々な構造がありますが、ここではひとまとめに反射望遠鏡と呼びます。

反射望遠鏡は大きな主鏡がむき出しに近い状態で設置される構造のため、放射冷却や外気との温度差の影響を強く受ける機材です。

しかも鏡を取り外すのが面倒で、一度主鏡や補正レンズが曇ってしまうと清掃が難しく、カビやシミの原因にもなるので結露対策は屈折望遠鏡以上に重要です。

ここでは私が実践している大型反射望遠鏡を結露から守るための具体策を紹介します。

撮影の1時間前に外に出して温度順応させる

反射望遠鏡の鏡筒(特に金属製)は内部と外気の温度差により、結露だけでなく筒内気流も発生しやすくなります。

そこで最も効果的なのが、日没前に機材を屋外に出して自然順応させることです。

  • 蓋をせず屋外に出す(絶対に太陽に向けないこと!!)
  • 設置後しばらく放置し、筒内と外気をなじませておく

これだけで結露と気流の両方を防ぐことができます。

鏡筒全体をアルミ保温シートで巻く

大口径反射鏡ではレンズヒーターのように局所的に温める方法が通用しません。

そこで私が行っているのが、鏡筒全体をアルミ保温シートでぐるぐる巻きにする方法です。

こんな感じです。

これでかなりの断熱効果が得られます。

  • 鏡筒に銀マットやアルミシートを密着させて断熱
  • 筒先にも同じ素材で自作フードを装着

これにより放射冷却による急激な温度低下を防ぎ、結露発生をほぼゼロにできました。

私が使用している200mm反射望遠鏡では、この方法で冬場も結露ゼロを維持できています。

補正板ありのシュミットカセグレンではヒーターリングが効果的

反射望遠鏡にも色々あり、前面に何もなく主鏡がむき出しなのがニュートン反射望遠鏡、前面に薄いガラス(補正板)が埋め込まれている場合はシュミットカセグレン望遠鏡です。

シュミットカセグレン望遠鏡の場合は厄介で、補正板が真っ先に結露する可能性があります。

そこでおすすめなのがヒーターリングです。

望遠鏡の補正板の枠にはめ込み、電力を供給することで補正板を温めることができます。

シュミットカセグレンでは導入が必須なので試してみてください。

鏡筒を地面から浮かせる

湿度の高い地面に直置きすると下からの水蒸気が鏡筒に伝わり、結露しやすくなります。

赤道儀の上に設置するのが絶対です。

設置の際に直置きすることがないようにしましょう。

使用後は乾燥保存が絶対!

撮影後、鏡にうっすら水分が残ったまま収納するとカビ・腐食・主鏡のくもりの原因になります。

  • 収納前に乾いた空気中で自然乾燥
  • 蓋を開けたまま室内でしばらく放置
  • 保管中は乾燥剤入りのケースや棚を使う

万が一主鏡にカビが生えてしまった場合は分解して掃除するしかありません。

自信がない人はメーカーに頼みましょう。

結露したらどうする?

どれだけ対策していても、予想以上の冷え込みや湿度で機材が結露してしまうことはあります。

そんなときに大切なのは焦らず、正しい方法で回復を待つことです。

誤った対処をするとレンズのコーティングを傷つけたり、電子機器を故障させたりする危険もあります。

ここでは私自身の経験と定番の対処法をふまえて、結露してしまったときの行動指針をまとめます。

タオルで拭くのはNG!表面を傷つけるリスク

レンズや補正板が結露するとついタオルや布で拭き取りたくなりますが、これは絶対に避けてください。

水滴の中には空気中の塵や塩分、黄砂の微粒子が含まれていることがあり、乾いた布でこすってしまうとレンズ面に傷をつける可能性があります。

拭くのではなく乾かすようにしましょう。

ドライヤーは冷風で!温風は危険

結露を飛ばす手段として最も有効なのがドライヤーや小型扇風機の「冷風」です。

弱風・冷風をレンズや鏡面にあてて気長に乾燥させるのが基本です。

多少時間はかかりますが辛抱強く待ってください。

また、温風は使わないでください。

熱膨張でレンズが歪んだり、金属が熱を持つことがあります。

センサーや基板に熱がこもって電子回路が故障する危険もあるのでやめてください。

特に冷却CMOSカメラや赤道儀に温風を当てるのは厳禁です。

センサーが曇った場合は完全停止して乾燥

冷却カメラのセンサー内部が結露して黒いシミが現れた場合の対処法はこの記事で解説しています。

それでもだめな場合は電源を落とし、外部から冷風を当てて自然に乾くのを待つしかありません。

決して通電したまま強制的に温めたりしないでください。

精密機械なので場合によっては故障する恐れがあります。

完全に曇ってしまったら撤収も選択肢に

どうしても回復が間に合わない場合、撮影を中止して撤収する判断も重要です。

「せっかくの撮影チャンスだし…」と思う気持ちもわかりますが、結露は想像以上に厄介です。

無理に続けて機材が壊れてしまえば、一晩の撮影どころか今後の撮影に大きな損失を与える恐れもあります。

結露が起きたら慎重に対処することが大事ですね。

まとめ:結露は想像以上に恐ろしい

結露は天体写真における最も静かで、最も破壊的なトラブルです。

目に見えないうちに進行し、気づいたときにはすべてのコマがボツになってしまいます。

そして最悪の場合、鏡やセンサーにシミや傷が残り機材自体が劣化してしまいます。

しかもその原因は寒さだけではありません。

気温・湿度・放射冷却・出力設定などさまざまな要因が複雑に絡み合って起こるため、
「夏だから大丈夫」「1本だけヒーターを巻いておけば安心」はまったく通用しないのです。

赤道儀や冷却カメラを整えても、結露一つで一晩が無駄になります。

だからこそ結露対策は後回しにすべきことではなく、撮影計画の一部に組み込むべき項目です。

結露に泣く夜をもう誰にも味わってほしくありません。

この記事がひとりでも多くの天文ファンの機材と作品を守ることにつながればうれしいです。

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