「望遠鏡で天体を撮ってみたいけど、何が必要かわからない…」
「スマホや一眼カメラでも撮れるの?」
「月や土星、アンドロメダ銀河って本当に写せるの?」
そんな疑問を抱えている初心者の方に向けて、この記事では「望遠鏡 撮影」に関する情報を実体験ベースで徹底的に解説します。
特に今回は、以下の3つの天体ジャンルごとに分けて解説します。
月の撮影:手軽に始められる入門編。望遠レンズでもOK!
惑星の撮影:土星の輪や木星の縞をとらえるには?
ディープスカイ撮影(星雲・銀河):赤道儀や長時間露出が必要な本格領域
さらに、それぞれに対して
・必要な機材は?
・スマホ撮影でどこまでできる?
・どんな写真が実際に撮れるの?
という点まで、初心者にもわかりやすく丁寧に解説していきます。
「機材がないから無理」とあきらめていた方も、この記事を読めば今あるカメラやスマホでも天体写真の世界に一歩踏み出せるようになります。
ぜひ最後までご覧ください。
Contents
月の撮影!初心者に最も優しい撮影対象
必要な機材
まず、身近な天体といえば真っ先に月が思い浮かびますね。
夜空で明るく輝く月はロマンチックで美しいです。
その姿を写真に撮ってみたいという人もいるのではないでしょうか?
というわけで必要な機材を紹介します。
| 種類 | 機材例 | 補足 |
|---|---|---|
| 撮影機材 | 一眼レフ/ミラーレスカメラ | RAWでの撮影推奨 |
| 望遠鏡 | 屈折式60-80mmクラス | 焦点距離は800mm以上 |
| 望遠レンズ(代替) | 300mm-600mm以上 | 望遠鏡がない場合はこちら。テレコンバーターを使うのもあり |
| 三脚 | ガッチリしたもの | 微振動に強いものを選ぶ |
| レリーズ or タイマー | シャッター操作によるブレ防止用 | タイマー2秒でもOK |
月は天体の中でも最も簡単で初心者向きの天体です。
理由は、非常に明るくて大きいからです。
天体の中には非常に暗いものや小さいものもありますが、月は肉眼ではっきり見えるほど明るいです。
ですが綺麗に撮影しようとすると意外とテクニックが必要な奥深い天体でもあります。
基本の撮影方法は望遠鏡を月の方に向けて、三脚を固定してブレないようにしてからシャッターを切るだけです。
なので月は高価な望遠鏡がなくても十分に撮影可能です。
特に、満月ではない上弦や下弦の月は陰影が強く出て、望遠レンズでもクレーターが立体的に見えやすいです。
実際に私が800mmのレンズで撮影した月がこちらです。(クロップ済み)

拡大すると不自然な部分もありますが…🥺
さらにクレーターを綺麗に描写するには2000mm以上の焦点距離のある望遠鏡で複数枚撮影し、あとから合成する手法もあります。
これは焦点距離800mmの望遠鏡で撮影した朧月です。

月の全体像は写っていますがクレーターはいまいちですね。
細かいクレーターを写したい場合、フルサイズカメラと組み合わせると焦点距離は2000mmくらい必要な気がします。
スマホ × 望遠鏡でも撮れる?
では、望遠鏡とスマホを組み合わせて月を撮ることはできるのでしょうか?
もちろん可能です。
昔に私がスマホと望遠鏡で撮った昼間の月がこちらです。

もちろん一眼カメラに比べると解像感は劣りますが、スマホでここまで撮影できるのは楽しいと思います。
また、現在ではGalaxyなどのスマホが望遠ズームを搭載していて月を撮ることもできます。
機材別に比較してみましょう。
| 撮影方法 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 一眼レフ+望遠鏡 | 解像感最強・拡大撮影可能 | 撮影技術・装備が必要 |
| 一眼レフ+望遠レンズ | 軽量・手軽・高画質 | 倍率に限界がある(最大800mm程度) |
| スマホ+望遠鏡 | 倍率が高くクレーターくっきり | セットアップに手間・揺れやすい |
どれを選ぶかは予算や目的で決めればいいと思います。
月は初心者にも始めやすく、天体写真の第一歩として最適なターゲットです。
惑星の撮影!意外と上級者向け
惑星撮影の難しさ
次は惑星の撮影の仕方を書いていきます。
惑星も月に劣らず明るいのですが、最大の難点として惑星は小さすぎるんですね。
具体的に言うと、フルサイズと組み合わせる場合月に使う焦点距離は2000mmくらいですが、惑星の場合は20000mmを超えます。
なのでほとんどの場合は惑星撮影で直接望遠鏡と一眼カメラを繋ぐ方法は使われず、アイピースを通して拡大するかセンサーサイズの小さなCMOS/CCDカメラを使うのが一般的です。
また、惑星は小さすぎるがゆえに大気のゆらぎの影響を大きく受けます。
大気のゆらぎは日によって変わり、大気のゆらぎが少ない日(シーイングがいい日)はシャープに写りますがシーイングが悪い日は惑星がぼやけて何も写りません。
なので惑星撮影は天体写真の中でも特に難しいジャンルと言われています。
スマホでコリメート撮影
ただ、ぼやけた惑星をただ写すだけならスマホでも簡単にできます。
必要なのは焦点距離の長い望遠鏡とアイピースです。
アイピースとは望遠鏡を目で覗いて月や惑星を観察するのに必要なレンズで、それぞれ倍率が決まっています。
アイピースを取り替えれば倍率が変わります。
顕微鏡の対物レンズをくるくる回して倍率を変えるのと同じような感じです。
ただ、拡大率が大きすぎると惑星を見つけるのがものすごく大変になります。
実際にやってみればわかりますが、望遠鏡を動かして小さな惑星をアイピースの視野の中にいれるのはかなり難しいです。
なので最初は広いアイピース(30mmなど)で惑星を見つけて、徐々に狭いアイピース(10mm)に切り替えていくのが一番いいでしょう。
例として、木星を撮影するなら2000mmの望遠鏡に10mmのアイピースを使えばばっちり縞模様が見えるはずです。(これでもまだ小さいですが)
ただ、この方法はお金がかからないものの惑星を見つけるのが非常に大変で、得られる画像もぼやけたものです。
本気で惑星撮影に取り組むなら別の方法を考える必要があります。
ガチの惑星撮影をしたいならこれ!
教科書や天文年鑑に載っているような惑星写真を撮るには特殊な機材が必要になります。
ざっとこんな感じです。
| 項目 | 推奨例 | 役割・ポイント |
|---|---|---|
| 望遠鏡 | 焦点距離2000mm以上 | 惑星に必要な高倍率を確保 |
| バローレンズ | 2倍から4倍 | さらに像を拡大してディテール強調 |
| カメラ | ZWO ASI662MC など | 高感度・小センサーで拡大撮影に最適 |
| 赤道儀 | 自動導入できるモデル | 視野に収めるには自動導入が必須 |
| 撮影ソフト | SharpCap / FireCapture | 高速動画をキャプチャー |
| 画像処理 | AutoStakkert! → RegiStax | 動画を高解像度画像に仕上げる |
ポイントは惑星をものすごく拡大して大量に写真を撮影し、大気の影響を受けていないコマを選別して合成することによりシャープな像を得ることです。
特にカメラはセンサーサイズがものすごく小さいモデルを選ぶと、惑星のように拡大しなければいけない場面で有利になります。
詳しくは調べてみてください。
天体写真の王道!ディープスカイ撮影
ディープスカイ撮影の難しさ
最後に紹介するのは天体写真の王道のディープスカイ撮影です。
ディープスカイ撮影とは月や惑星ではなく、星雲や星団、銀河といった幅広い天体を撮影するものです。
特に有名なものだとオリオン大星雲やアンドロメダ銀河がありますね。
惑星ほど小さいものは少ないですが、ディープスカイ撮影の難しさは暗い天体が多いことにあります。
肉眼では見えないような暗い天体は普通に撮るだけでは写真に写らず、暗い夜空の下で何時間も露光しないといけない場合がほとんどです。
また、ディープスカイ撮影の醍醐味は画像処理にあります。
星雲や銀河といった天体は暗すぎて、ただ撮影するだけでは色がほとんど乗りません。
そこで、撮った画像の色彩やコントラストを強調してひとつの作品に仕上げる過程が画像処理です。
画像処理前と後では全くの別物になっている場合が多いですね。
雑誌に載るような上手い天体写真家は撮影だけでなく画像処理も上手いです。
星雲・星団を撮影
ディープスカイ撮影にも大きく2種類あり、星雲・星団の撮影と銀河撮影で使う機材が少し違ってきます。
まずは星雲・星団撮影を紹介します。
星雲・星団撮影では夜空に望遠鏡を向け、赤道儀で天体を追いかけながら何十枚も撮影してあとから合成する手法が取られます。
必要な機材はこんな感じです。
| 項目 | 機材・仕様 | 解説 |
|---|---|---|
| 望遠鏡/レンズ | 焦点距離300-600mmの明るいレンズ or 望遠鏡 | 比較的広い視野が必要。f値が低いとよい。 |
| 赤道儀 | 中型赤道儀 | 数分露出でも十分追尾可能。自動導入機能があるとよい。軽量で遠征向き。 |
| カメラ | 天体改造一眼カメラ or CMOS/CCDカメラ | Hαなど赤い星雲を写すには改造機が有利。 |
| ガイド機材 | なし or 簡易オートガイド | 短い露出ならガイドなしでもOK。 |
| フィルター | ナローバンドフィルターや光害カットフィルターなど | 空が明るい場所では使うとよい。色かぶり防止。 |
| 電源 | ポータブル電源 (EcoFlow RIVER 2 Pro など) | 赤道儀とカメラに供給できれば十分。 |
| 撮影ソフト | APT, NINA, ASIair など | プレートソルブやバッチ撮影が便利。 |
| 画像処理 | PixInsight, Photoshop など | 画像処理は手を抜きたくないところ。 |
星雲・星団撮影で必要な焦点距離はフルサイズで600mm前後なので、望遠レンズが家にあればそれでも可能です。
ただ、星の描写はやっぱり望遠鏡のほうが上なので天体写真専用で買ったほうがいいでしょう。
実際に私が撮った写真はこんな感じです。




最初は難しいですが、慣れてくれば楽しいです。
詳しいことはこの記事で解説しています。
銀河を撮影
次に紹介するのは銀河の撮影です。
宇宙に浮かぶ銀河は星雲よりも小さいものが多く、さらに暗いので非常に厄介です。
惑星は「明るいけど小さい」、星雲は「暗いけど大きい」でしたが銀河は「暗くて小さい」天体です。
撮影難易度で言えばトップクラスになると思います。
必要な機材はこんな感じです。
| 項目 | 機材・仕様 | 解説 |
|---|---|---|
| 望遠鏡 | 焦点距離1200-2000mmの高精度反射望遠鏡 | 高倍率で淡い銀河をしっかり写す。口径が大きくて高品質なものが必要。 |
| 赤道儀 | 高精度・高耐荷重モデル | 長時間露出に対応できる追尾精度が必須。 |
| カメラ | 冷却CMOSカメラ | ノイズを抑えつつ、淡い対象を捉える性能。センサーサイズが小さいと拡大されるので撮影がしやすくなる。 |
| ガイド機材 | オフアキシスガイダー or ガイドスコープ+ガイドカメラ | 長時間露出・高倍率ではオートガイドは必須。 |
| フィルター | 基本はなし or Hαフィルター | 銀河の中の赤い領域を強調したいなら必要。 |
| 電源 | 大容量ポータブル電源 (EcoFlow RIVER 2 Pro など) | 冷却カメラや長時間運用に耐える電源が必要。 |
| 撮影ソフト | APT, NINA, ASIair など | 自動化・オートガイド連携・構図再現など高度な制御が可能。 |
| 画像処理 | PixInsight など | 星像処理・銀河ディテール抽出に高度なスキルとソフトが必要。 |
使う望遠鏡もほとんどは反射望遠鏡になり、光軸合わせや結露防止策など難しいことだらけです。
最初から銀河撮影を始めるのはおすすめしません。
ただ銀河にも例外があり、アンドロメダ銀河とさんかく座銀河は大きいので星雲と同じような感覚で撮影できます。


銀河に興味があればまずはこの2つから始めてみてください。
詳しい撮影の仕方はこの記事で書いています。
興味がある天体を選んで徐々にステップアップしよう!
ここまで読まれた方は「どれも難しそう」と思われるかもしれません。
ただ、月は望遠鏡を向けるだけで簡単に撮れます。
まずは望遠鏡を買って、興味のある天体から少しずつ始めてみるのはいかがでしょうか。
誰しも最初から完璧だったわけではありません。
まずは楽しみながら撮影できるといいですね。
わからないことなどあればコメント欄で聞いてください。
では。



















