「星が綺麗に見えるホテル」と聞いてどんな宿を思い浮かべますか?
広々としたリゾート施設、露天風呂から見上げる満天の星空、美しい内装…そんなイメージかもしれません。
ですが、星雲や銀河などの天体写真を撮る人(ガチ勢)にとっては本当に必要な条件はまったく違います。
星空を見るだけでなく「撮る」ことが目的であれば、光害・騒音・設営の自由度・撤収のしやすさ・安全性など、ホテル選びの基準は一変します。
今回は関東から遠征する天体ファンの視点で、私が本気でおすすめしたい宿「民宿りんどう(長野県・野辺山)」について徹底的にご紹介します。
Contents
野辺山は関東から行ける星空の天国
野辺山は八ヶ岳山麓にある標高1350mの高原地帯で、日本有数の星空観測地として知られています。
晴れた夜は天の川が肉眼で確認できるほどの透明度と暗さがあり、関東圏から車・電車でアクセスできる範囲では屈指のロケーションです。
しかも夜中まで人気(ひとけ)が少なく、冬は空気が澄んでいるので星景写真も天体写真も狙える万能な場所です。
しかも野辺山は公共交通機関でのアクセスが非常によく、新宿駅からあずさで小淵沢駅に行き、小海線に乗り換えるだけで野辺山駅につきます。
電車の接続がよければ、新宿から2時間半ほどで野辺山に行けます。
あずさは立川駅と八王子駅にも停まるので、東京の西のほうに住んでいる人にとってもうれしいですね。
ただ、小淵沢駅に停まるあずさと通過するあずさがあるので調べてください。
このように、野辺山はアクセスのよさと空の暗さを両立している数少ない場所です。
遠征先に迷っている方には、まず「野辺山」を一度は訪れてほしいと思っています。
民宿りんどうってどんな場所?

民宿りんどうは野辺山にある民宿で、星空の聖地として多くの星空ファンが訪れる場所です。
民宿なのでリゾートホテルのような豪華さはないですが、逆に質素な雰囲気が星空を見るのに最高なんですよね。
民宿りんどうの位置はこんな感じです。
野辺山駅から少し離れた場所にあります。
ただ、連絡すれば野辺山駅まで車で送迎してくれるので安心です。
りんどうの夜空は非常に暗いです。
スキー場からも離れているので光害の影響がほとんどありません。

空の暗さを表すSQMは21.68です。
SQMの値が大きいほど星が見えやすいことを表します。
都内のSQMが18くらい、光がまったくない極限状態で22くらいなので非常に空が暗いことがわかります。
体感で言うと、空がオレンジ色の薄明の状態でカシオペヤ座がはっきり見えるくらい空が暗いです。
冬の天の川も肉眼で見えました。
空が暗いだけでは不十分。リゾートホテルの現実
ですが、「天体写真撮るなら民宿じゃなくてリゾートホテルのほうがゆったりできるんじゃないの?」と思う方も多いかもしれません。
確かに、リゾートホテルのほうが設備が整っていてゆっくりくつろげることは確かです。
しかし実際には「空の暗さ」だけでは不十分で、リゾートホテルにはさまざまな落とし穴があります。
ここではリゾートホテルあるあるを詳しくご紹介します。
ホテルのライトアップが星空の大敵に
まず見逃せないのが光害です。
リゾートホテルでは外観や庭園のイルミネーションや装飾ライトが施されていることが多く、これが星空の撮影には大きな障害となります。
空が暗くても、周囲が明るければ長時間露光がかすんで白っぽくなることもあります。
せっかく暗い場所までやってきたのに台無しですね > <
特に星雲や天の川など淡い天体を狙う場合、わずかな光でも写真に悪影響を及ぼすため見た目の雰囲気が良い=撮影向きではないというケースは少なくありません。
観光客によるライトやフラッシュの問題
もうひとつ見落とせないのが、他の宿泊客による光害です。
観光目的のカップルや子連れのファミリーが多く、深夜でもスマホのライトを点けたまま移動したり、フラッシュ撮影をする光景がよく見られます。
こうした光が偶然入るだけで1枚の撮影が台無しになることもあります。
特に、5分以上の長時間露光では一枚没になるだけでもかなりのロスです。
撮影場所の確保が難しい
次に大事なのは撮影場所ですね。
リゾートホテルでは撮影に適した場所を自分で探さないといけない場合が多いです。
テラスがない部屋や、屋上へのアクセスが制限されている施設では機材を抱えて暗くて安全な場所を探し回る必要があります。
特にホテルから遠い屋外になると機材が心配になり、一晩中寝れないといったことも起きます。
夕食が豪華すぎて撮影タイミングを逃す
一見ありがたい豪華なコース料理ですが、これが撮影者にとっては思わぬ落とし穴になってしまいます。
食事のスタート時間が遅かったり2時間かかる場合もあり、「気づけば天の川が南中を過ぎていた…」ということもあります。
また、食事時間を自由に選べない施設も多く、天候や時間に応じてフレキシブルに動きたい撮影者には不便です。
普通の人からしたら「食事こそホテルの醍醐味でしょ」って言われそうですが笑笑
夜間の出入りが制限される場合も
最悪なのは門限があるケースです。
夜間撮影を計画していてもホテルによっては門限があったり、玄関が22時以降施錠されてしまうこともあります。
中には出入りにスタッフの対応が必要な施設もあり、深夜の自由な行動が制限されてしまいます。
長時間露光や夜明け前の撮影を計画している場合、このような制約が致命的になる可能性もあるのです。
このように、リゾートホテルがいいとは限らないのが天体写真界隈です。
民宿りんどうはどうして天体写真向きなの?
リゾートホテルが「おもてなし」に重点を置く一方、民宿りんどうは「自由」に重点を置く宿です。
ここでは民宿りんどうが天体写真向きな理由を紹介します。
屋上テラスで望遠鏡放置が可能
この宿の最大の魅力はなんといっても、屋上に望遠鏡が設置できることです!
事前に「星を撮りたい」と伝えておけば屋上テラスに赤道儀・三脚を広げることができ、設営したまま一晩中撮影を続けることができます。
民宿りんどうのオーナーさんは星空が好きで、天体写真を撮っている人への理解もあります。
まさに天体写真の聖地といったところですね。
たとえばASIairを使って撮影プログラムを組んでおけば、寝る前にボタンを押して布団に入るだけ。
朝起きたら何百枚ものライトフレームが完成している…。
この運用ができる宿は全国的にもごくわずかです。
普通の宿であれば撮影地まで歩いていかなくてはならず、クマに怯えたり寒さに震えながら一晩を乗り切らないといけません。
ですが民宿りんどうは違います。
屋上なのでクマや荒らしの心配がなく、設定が終わったら寝ることもできます。
一晩中起きているのは想像以上につらいので、仮眠がとれるのはありがたいです。
光害がほぼない
民宿りんどうの周りにはリゾート施設やスキー場がなく、月のいない夜は本当に真っ暗です。
目が順応していないと足元が見えないレベルです。
リゾートホテルによくあるキラキラしたイルミネーションや街灯もなく、屋上は光源が一切ありません。
2階の廊下からの照明が少し明るいですが、オーナーさんに説明したら「勝手に消していいよ」と言われたのでかなり自由です。
南側の道路からやってくる車のハイビームがたまに飛んできますが、建物の近くに望遠鏡を置けば建物が光を遮ってくれます。
北の空が特に暗い
民宿りんどうの北側にはほぼ街がなく、真っ暗です。
4等星(視力がよければ5等星)も普通に見えます。
北の天体(おおぐま座、りゅう座、ケフェウス座、カシオペヤ座、きりん座など)を撮るなら、特に民宿りんどうはおすすめです。
他の一流遠征地にも負けない夜空が待っています。
逆に、南側はスキー場や車の明かりで少し明るいかもしれないですね。
とはいっても天の川は普通に見えますし、城ヶ島よりかは遥かに暗いです。
とにかく静か。民度が高い
星を撮るには静けさも大事です。
ところがリゾートホテルや大きな宿だと、夜にスマホのライトを振り回す人や懐中電灯で歩き回る観光客に出会うことも珍しくありません。
昔行った美ヶ原は宿泊客ではないカップルや大学生グループもたくさんいて、かなり懐中電灯が明るかったです。
民宿りんどうは基本的に空いていて、宿泊者も数組です。
夏休みに高校の天文合宿で大人数が来ることがありますが、それくらいです。
「ライトを消してください」と注意する必要がないくらい、静かな環境が保たれているのは大きなメリットです。
個人経営だから自由度が高い
この宿は大手チェーンではなく、個人経営の温かみある民宿です。
そのため、「星を撮りたいので屋上を使いたい」「機材を日中もそのままにしておきたい」「赤道儀を先に送るので受け取ってほしい」「食事の時間をずらしてほしい」といったガチ勢の要望にも柔軟に対応してくれます。
私も2泊して撮影機材を屋上に置きっぱなしにしていましたが、特に何も言われず、むしろ応援してもらえました。
このような宿は本当に貴重です。
食事も美味しい
リゾートホテルじゃないからといって、食事が手抜きというわけではありません。
私が泊まったときは夕食におろしハンバーグが出てとても美味しかったです。

他にもとんかつやグラタンなど、日によってうれしいメニューがたくさんあり飽きなくて楽しいですね。
万人受けはしないがガチ勢には最高
民宿りんどうにはいくつかの不便さもあります。
具体的には:
- 1室8畳で家族連れには狭い
- 冬は室内が寒く、ガスストーブ頼り(換気しないといけない)
- 夏は部屋に虫が出ることも。廊下にはだいたい蛾がいる
- トイレが部屋になく共用トイレのみ
- 部屋に冷蔵庫がない(2階に共用冷蔵庫がある)
- 水は1階の給湯器か水道水(でもおいしい)
- 自販機はない
- エレベーターがないため階段移動
- お風呂に入れる時間が17:00-22:00で短い
- コップや歯ブラシなどのアメニティがない
そのため、カップルやファミリー層にはやや不向きです。
逆に言えば、観光客があまり泊まらないので天体写真に集中できる穴場とも言えるでしょう。
8月でも空いている!? 穴場すぎる実態
私が前に泊まったのは8月初めで、一般的には「星見の繁忙期」と言われる時期です。
ですが、なんと他の部屋はガラガラ。
予約も2日前に取れました。
アクセスがよくて星空が綺麗なのに、観光宿としての宣伝がされていない秘密基地状態です。
他の宿との比較:八ヶ岳グレイスホテルは?
私自身、野辺山周辺の他の宿にも泊まったことがあります。
野辺山で星が見れる宿といえば八ヶ岳グレイスホテルが有名ですよね。
2月の冬まっただ中に泊まりました。
ホテルの目の前で星空鑑賞会があったり、食事が豪華だったり、何よりも部屋が暖かかったです笑
冬場は民宿りんどうは少し過酷かもしれないですね。
厳重な防寒対策をおすすめします。
ただ、八ヶ岳グレイスホテルは
- 屋上がない
- ホテルの前のイルミネーションやスキー場が近くて明るい
という理由で天体写真ガチ勢にはおすすめできません。
実際、私が2月の夜明け前に寒い中雪道を歩いて天の川を撮影しに行ったら、南東方向にシャトレーゼのスキー場の明かりが煌々と輝いていて撃沈しました。🥺
八ヶ岳グレイスホテルは星を「見る」場所なら最高ですが、「撮る」なら民宿りんどうをおすすめします。
こんな人には民宿りんどうがおすすめ!
- 星を撮るためだけに宿を選びたい
- とにかく暗い場所がいい
- 望遠鏡を設置して寝ていたい
- 他人のライトに邪魔されずに撮りたい
- 2,3泊連泊して撮影に集中したい
- 静かな環境とオーナーの配慮を重視したい
- 天気を見て直前に予約したい
作例
「民宿りんどうで実際にどんな写真が撮れるの?」という人のために、私が撮影した天体写真を紹介します。





普段私は横浜市内から光害カットフィルターを使って色々な天体を撮影していますが、それとは比べ物にならないくらい質の良い画像が得られます。
民宿りんどうの環境は本当に暗いのでおすすめです。
関東から天体を撮りに行くなら民宿りんどう一択
ホテルがいくら高級でも、星を撮れなければ意味がありません。
イルミネーション、ライト、騒音、屋上が使えない宿では、機材を広げて撮影しながら眠ることはできないのです。
野辺山の民宿りんどうは撮る人の理想をそのまま形にしたような宿です。
晴れた夜を逃したくない。
できるだけ静かに、安全、快適に星を撮りたい。
そんな人には民宿りんどうを本気でおすすめします。
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