トラブルシューティング

反射望遠鏡のフラット補正3種類を比較してみたらゴミ袋フラットが一番だった話

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多くの天体写真ファンが最も苦しめられるのはおそらくフラット補正でしょう。

フラット補正は画像のムラやホコリの影をなくすためのもので、フラット補正を間違えればどんなにいい写真を撮っても壊滅します。

なのでフラット補正は天体の撮影と同じくらい重要なのですが、「フラット補正が合わない」という人が続出しているようです。

事実、私もフラット補正にはものすごく悩みました。

屈折望遠鏡のときは青空に向けて露光時間を調節し、フラットフレームを撮影すれば解決できていました。

ですが、反射望遠鏡のR200SSを導入してから全てがおかしくなってしまったのです。

フラットが合わない!

ある日家のベランダで銀河を撮影し、翌朝になって青空でフラットフレームを撮影しました。

もちろん、青空に向けて撮影するときは望遠鏡を太陽には向けていけません。

ですが前処理を終えたあと、出来上がった画像は変なムラだらけの汚い画像でした。

もちろん、光害まみれの横浜市内で撮っているので画像が汚くなるのは仕方ないでしょう。

しかし、屈折望遠鏡のRedcat51のときには現れなかった変なムラが出現していたのです。

かぶり処理では誤魔化すこともできず、結局中心部だけをクロップしてかぶり処理を何度もかけることになりました。

しかし、そうして得られた画像は汚く荒れたものでした。

高解像度を得るために導入したR200SSでしたが、出来上がる画像は口径が1/4程度のRedcat51よりはるかに劣るものでした。

そこで色々考えて試したところ、ゴミ袋フラットというものを見出しました。

ゴミ袋フラットとは?

ゴミ袋フラットとは、その名の通り反射望遠鏡の正面に大きなゴミ袋を被せ、夜空を撮影する手法です。

ここで重要なのは夜のうちに撮影するということです。

私のような光害地に住んでいる場合、夜もかなり明るいです。

なので望遠鏡にゴミ袋を被せ、夜空に向かって10秒間撮影するだけでフラットフレームが1枚出来上がりです。

60枚なので10分くらいで撮影が終わります。

ただ、遠征地は非常に暗いのでこの手法は使えません。

ライトを使えば周囲の迷惑にもなり、せっかくの撮影時間を使ってまでフラットを撮影したくないでしょう。

その場合は薄明でも大丈夫です。

実際、私が野辺山に遠征したときは薄明でゴミ袋フラットをしましたがうまくいきました。

薄明では空の明るさが刻一刻と変わるので、3秒間を60枚くらい撮影しとけば大丈夫です。

また、ゴミ袋は多少しわくちゃでも問題ありません。

ゴミ袋の底に走っている太い線が写らないよう、線が望遠鏡の筒の外に出るようにゴミ袋をずらすといいでしょう。

私は半透明のゴミ袋を使っています。

フラット補正3種類を比較してみた

ここであなたは「そんなんで本当にうまくいくの?」と思われたでしょう。

というわけで実際に比較してみました。

光害地の横浜市内から撮影した銀河の画像で、次の4種類のもので実験してみました。

・フラットなし

・青空フラット

・LEDパネルフラット

・ゴミ袋フラット

さっそく見てみましょう。

なお、都合により比較する写真は微妙に違っています。

ですが背景の分布を見てもらえば違いはわかると思います。

ご了承ください。

フラットなし

見ての通り大荒れですね。

特に左下が真っ暗になってしまい修復不能になってます。

また、中心部の右上あたりにも謎のもやもやとしたくぼみがあり不自然です。

何もしていないのにメッシュみたいな模様も入ってしまっています。

これでは中心部のごく一部しか使えないでしょう。

青空フラット

何もかぶせず、快晴の青空に向けて極めて短い露光時間でフラットフレームを撮影したものです。

左下が真っ暗なのは解決しました。

ただ、中心を取り囲むように謎の緑色っぽい領域ができています。

中心と端は紫色っぽく、それ以外は妙に緑色です。

さっきよりかはマシですが、中心だけ色が違うのは気に食わないです。

銀河なので背景の彩度を落とせば済む話ですが、星雲の場合は崩壊ですね。

クロップした場合は中心以外の8/9くらいは失う計算です。

最悪です。

LEDパネルフラット

明るさが調整できるLEDパネルを使ってフラットフレームを撮影したものです。

今度は緑色っぽい輪っかは解決されましたが、ところどころ黒っぽく落ち込んでいます。

左上、左下、中心部の右下あたりが暗いですね。

色の問題はなさそうですが明るさが均一ではありません。

変なくぼみがあると、後で強調処理した際に悲惨な目に遭います。

この場合使えるのは左下をクロップした中心部から右上のあたりでしょうか。

かなりの損失ですね。

そもそも、クロップを前提で天体写真を撮影したくないです。

どうせなら写真のすべての領域を使いたいですよね。

そこで登場するのがゴミ袋フラットです。

ゴミ袋フラット

これがゴミ袋フラットです。

完璧ですね。

最初は目を疑いました。

3万円のLEDパネルに勝つなんて…🥺

これが現実なので仕方ありません。

それにしてもすごいですね。

ただのゴミ袋でここまで完璧にフラット補正がされるなんて驚きです。

100円で数十枚入ってるタイプなので一枚3円くらいでしょう。

ローコスト・ハイリターンの典型例です。

これからはゴミ袋の時代

いかがでしょうか?

これはあくまで私の場合なので、みなさんが試してみてどうなるかはわかりません。

なので実際にいくつか試してみるといいと思います。

私が試していない中でもやり方はいくつかあります。

例えば薄明の空フラットです。

薄明の空に向かって何も被せずフラットフレームを撮影するものです。

実際、1月の城ヶ島遠征で撮影したHCG44銀河群のフラット補正は薄明の空フラットでうまくいきました。

光害地は特殊な環境なので色々と試行錯誤する必要があると思います。

また、私が屈折望遠鏡を使っていたときは真夜中に白い布を望遠鏡に被せ、空に向けて撮影したところフラットが完璧に合いました。

その頃の写真はこれです。

ASI294MC Pro は暴れ馬です。

あまりにもフラットが合わなさすぎるので今では使わなくなってしまいました。

R200SSと組み合わせるときは ASI533MC Pro を使っていますが、それでもフラットが合わないと画像が荒れてしまいます。

反射望遠鏡は複雑です。

光軸ずれや主鏡の圧迫、接眼部のガタなどで写真がすぐ台無しになってしまいます。

特にフラットが合わないと致命的ですね。

フラットが合わなくてイライラしている人はぜひゴミ袋フラットを試してみてください。

では。

私が使っているゴミ袋↓

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