
天の川や満天の星空をカメラで捉えたときの感動って、言葉では表しきれないものがありますよね。
SNSや写真共有サイトを覗くとプロ顔負けの美しい天体写真がずらりと並んでいて、「自分もこんなふうに撮りたい!」と思うでしょう。
しかしいざ機材を持って夜空の下に立つと、ふと頭をよぎる疑問があります。
それが「ホワイトバランス、どうすればいいんだろう?」というもの。
星空の撮影方法を検索すれば「色温度を○○Kに設定しよう」とか、「夜空は青みがかった色がベスト」など様々な意見が飛び交っていて混乱してしまいますよね。
ですが、実はホワイトバランスに関してはそこまで神経質になる必要はありません。
むしろ「そこ、そんなに気にしなくて大丈夫です」と声を大にして言いたいのです。
この記事では、その理由を丁寧にお話ししていきます。
Contents
ホワイトバランスってそもそも何のためにあるの?
まずは「ホワイトバランスってなんなの?」という基本から。
ホワイトバランス(WB)は、写真において「白を白く写すため」の仕組みです。
光源の色温度に応じて写真の色味が偏らないようにカメラが調整を行う機能なんですね。
例えば蛍光灯や白熱灯のような人工光の下で写真を撮ると、ホワイトバランスがうまく調整されていない場合に写真が青っぽくなったり黄色っぽくなったりすることがあります。
これは多くの人が一度は経験したことがあるのではないでしょうか。
それをカメラが自動的に補正して、「白いはずのものがちゃんと白に見える」ようにしてくれるのがWBの役割です。
つまり、被写体の色を正確に再現することが目的です。
ところが星空や天の川の撮影では、「正確な色」を再現することが目的じゃない場合が多いです。
なぜなら人間の目で見ても星空ってほぼモノクロに近いですし、天の川がはっきり色づいて見えることはまずありません。
それでも私たちが撮った写真では天の川が青く輝いたり、紫がかった空に浮かび上がったりしています。
それは現実を再現しているというより、表現していると言ったほうがいいでしょう。
ホワイトバランスはその表現を邪魔しない範囲で自由に扱ってOKなパラメーターです。
RAWで撮ればホワイトバランスは後から変え放題
多くの星景写真ファンがRAW撮影を推奨する最大の理由が、撮ったあとからホワイトバランスを変えられることです。
RAWデータは撮影時の設定に左右されない生のデータです。
つまりホワイトバランスも露出もあとからパソコン上で自由にいじることができます。
JPEGで撮ってしまうと撮影時のWBが画像に焼き込まれてしまうため、後からの調整には限界があります。
ですがRAWであれば、撮影時にどんなWBで撮っていようが現像ソフトで好きな色味に仕上げられます。
しかも画質を劣化させることなくです。
たとえば撮影時はAWB(オートホワイトバランス)にしていたけど、現像時に「ちょっと青みを強めて神秘的にしよう」とか、「あえて暖色系にして夕方っぽい空気を出そう」といった調整が自在にできるわけです。
ホワイトバランスは設定ではなく、あとで決める表現の一部と考えた方が気が楽になりますよ。
撮影時はオートでいい!その理由とは
「でも、撮るときに変な色になってたら嫌じゃん」と思うかもしれません。
確かにその気持ちわかります。
ですがRAWで撮る前提であれば、撮影時のWBは仮の設定なのであまり気にしなくても大丈夫です。
むしろホワイトバランスをオート(AWB)にしておけば、カメラがその場の光に応じていい感じに合わせてくれるので現場でいちいち色温度を気にする必要がありません。
撮影中は構図やピント合わせ、露出時間など他に集中すべきことがたくさんあります。
実際に多くの天体写真家も撮影時のWBはオート、もしくは3500-4000Kあたりの固定にしている人がほとんどです。
なぜなら、どうせ後で変えるから。
現場で色味に悩むくらいなら、感動を逃さずシャッターを切ることの方が大事だと思います。
青い星空だけが正解じゃない
「天の川は青く写すのが美しい」「星景写真はクールトーンが基本」と思っている人が多いかもしれません。
でもそれって本当に正解なんでしょうか?
実際の夜空は場所によって全然違います。
例えば街明かりの近くでは空がオレンジや赤っぽく染まって見えるし、高地では冷たくクリアなブルーグレーだったりします。
光害の影響、地形、季節、湿度…様々な要素が空の色を変化させます。
だからこそ「この色が正解」という固定観念に縛られる必要はないんです。
青くしてもいいし、モノクロっぽく仕上げてもいい。
自分の感覚で「この色が好き」「この雰囲気が出したい」と思える表現が、あなたの作品になります。
星景写真はアートです。
アートに唯一の正解なんてないと思います。
ホワイトバランスより大事なこと、いっぱいある
星空を撮るとき、最初のうちは設定にあれこれ悩むのも楽しい時間のひとつです。
ですがホワイトバランスに関しては、悩む時間を撮影や編集にまわした方がずっと有意義だと思います。
星空撮影において本当に大事なのは構図のセンス、星のシャープさ、ノイズの少なさ、空の透明度、そして何より「どんな空を表現したいか」という自分の感性です。
設定にこだわるのも楽しいですがホワイトバランスはもっと自由に、ラフに気楽に考えていい部分です。
もっとのびのびと星の写真を楽しみましょう。
では。