夜空に広がる満天の星々。
そしてその下に広がる壮大な山々や海辺の岩場。
そんなロマンあふれる光景を一枚に収める星景写真は多くの写真愛好家にとって憧れです。
その星景写真をより幻想的に、美しく仕上げるためのツールがソフトフィルターです。
しかし実際に使ってみると、
「思ったより星がぼやけすぎた」
「風景のシャープさが失われてしまった」
「スタック撮影がうまくいかなかった」
そんな声が聞こえてくるのも事実です。
この記事では、ソフトフィルターの
・メリット・デメリット
・使うべき場面と使わないべき場面
・一枚撮り・スタック撮影での注意点
・リアソフトフィルターの活用法
を初心者にもわかりやすく徹底解説していきます!
ぜひ最後まで読んで、あなたにぴったりの使い方を見つけてください。
Contents
- 1 そもそもソフトフィルターとは?基本から理解しよう
- 2 ソフトフィルターが活躍する場面|使うべき理由とシチュエーション
- 3 星を目立たせたい、印象的に見せたいとき
- 4 幻想的な雰囲気を演出したいとき
- 5 一枚撮りにこだわりたいとき
- 6 ソフトフィルターがいらない場面|使わないほうがいい理由とは?
- 7 風景の細かいディテールを大切にしたいとき
- 8 星座の形を正確に残したいとき
- 9 望遠レンズで撮影するとき
- 10 ソフトフィルターは一枚撮り向き、スタック撮影では外そう!
- 11 リアソフトフィルターという新たな選択肢!
- 12 どんなレンズにも対応可能!
- 13 ゴーストやフレアが極小化
- 14 周辺部の星の伸びが大幅に抑えられる
- 15 ソフトフィルターを自由自在に操ろう!
そもそもソフトフィルターとは?基本から理解しよう
まずはソフトフィルターの役割をしっかり理解しておきましょう。
ソフトフィルターとはレンズの前または後ろに取り付けることで、光源をわずかに拡散させ柔らかく滲んだような表現を加えるフィルターのことです。
星の光は点光源で、シャープなカメラではただの点でしか写りません。
しかし、肉眼で見ると明るい星ほど広がりを持っているように見えます。
それを再現するのがソフトフィルターです。


上がソフトフィルターなし、下がありです。
これにより、明るい星ほど広がりを持った光として写すことができます。
星景写真においては、
・明るい星を大きく見せる
・写真全体に幻想的な雰囲気を加える
・ナチュラルな光芒効果を与える
といった効果が期待できます。
代表的なのは Kenko のプロソフトンシリーズです。
前玉にねじ込むタイプと後玉に貼り付けるタイプがあり、私は前玉にはめ込むタイプを使っています。
ここで注意するべきなのは、レンズによって対応しているフィルターのサイズが違うことです。
私がNikonのミラーレスユーザーにおすすめしている NIKKOR Z 20mm f/1.8 S のフィルター径は77mmなので、このフィルターを使えばいいことになります。
実際、私もこのフィルターを使っているのでおすすめです。
一度商品ページを見てみてください。
ソフトフィルターが活躍する場面|使うべき理由とシチュエーション
ここではソフトフィルターを使うといい場面を解説していきます。
星を目立たせたい、印象的に見せたいとき
ソフトフィルターを使うと、明るい星の強い光が拡散されふんわり大きく写ります。
星々の輝きが大きく写るので画面全体が一気に華やかになります。
たとえば夏の天の川を撮影するとき、冬のオリオン座や冬の大三角を強調したいとき、流星群を印象的に撮りたいときなどにおすすめです。
星の美しさを重視する人にはうってつけです。
幻想的な雰囲気を演出したいとき
ソフトフィルターは星空を単なる記録写真ではなく、感情を揺さぶるアート作品に変えてくれます。
ソフトフィルターなしだと星が鋭すぎて、なかなか肉眼で見た星空の印象に近づけるのは難しいです。
ですがソフトフィルターありの場合、明るい星ほど大きく写るので実際の夜空の印象に近づけることができます。
「あの日の感動をそのまま残したい」という人にはとてもおすすめです。

一枚撮りにこだわりたいとき
星景写真でもスタック「何十枚もの画像を後から重ね合わせる手法」をする人がいますが、赤道儀がなかったりやり方がわからなかったりする人もいるでしょう。
そんなときこそソフトフィルターです。
ソフトフィルターを使えば星の光がにじむので、そこまでノイズが目立たなくなります。
星の色も鮮やかになるのでレタッチもしやすいです。
ソフトフィルターがいらない場面|使わないほうがいい理由とは?
ですがソフトフィルターも万能ではありません。
ここでは使わないほうがいい場面を書いていきます。
風景の細かいディテールを大切にしたいとき
ソフトフィルターは光を拡散させるため、星だけでなく風景の輪郭も少しぼやけてしまいます。
そのため、
・鋭い山の稜線
・ゴツゴツした岩場の質感
・くっきりとした木々の輪郭
といった細部をしっかり写し取りたい場合は、フィルターなしで撮影するのがいいでしょう。
ただ、そもそも星景写真で前景(人、石碑、建物など)がぼやけるのは仕方ないことです。
本来カメラは決まった距離にしかピントが合いません。
なので夜空にピントを合わせた場合、カメラのすぐ近くの前景にはピントが合わなくなってしまいます。
前景から少し離れて夜空と同じ距離感で写すか、あえて前景にピントを合わせて夜空を玉ボケみたいにキラキラさせるのもアリでしょう。
星座の形を正確に残したいとき
ソフトフィルターによる滲みで星座の星々が大きく膨らみ、星同士の距離感が曖昧になりやすくなります。
特に明るい惑星(金星や木星)はあまりにも肥大化しすぎて不自然になってしまうこともあります。
その場合は弱いソフトフィルターに取り替えるか、フィルターあり/なしの両方を撮って後で合成しましょう。
望遠レンズで撮影するとき
望遠レンズで夜空を撮影したとき、夜空の細かい部分まで拡大されます。
多くの星が非常に明るく写るようになってきます。
その場合、ソフトフィルターを使うと星が滲みすぎてうるさくなってしまうんですよね。
星団の写真にソフトフィルターを使っている人がいますが、星のシャープさが消えて台無しになっている場合が多いです。
ソフトフィルターは広角の星景写真で使うのが一番いいと思います。
ソフトフィルターは一枚撮り向き、スタック撮影では外そう!
最近は地上風景と夜空を別々に撮り、後から合成する「新星景写真」が流行っています。
その場合は地上風景は一枚だけで、夜空は赤道儀で星を追いながら数十枚撮るのが一般的です。
星空の写真を数十枚撮って後から合成することにより、ノイズを劇的に減らすことができます。
この画像を複数枚重ね合わせる工程をスタック(コンポジット)処理といいます。
しかし、スタックを前提として複数枚写真を撮る時にソフトフィルターを使うのはおすすめできません。
その理由は、エラーが起きる可能性が高まるからです。
画像を何十枚もスタックするとき、星の位置をすべての画像で完璧に合わせる必要があります。
そのときに機械が自動で位置合わせをしてくれるのですが、ソフトフィルターを使うと星が肥大化して星の数が減ります。
機械は鋭い星空を前提としているので、位置合わせの際に困ってしまうのです。
そしてエラーになり、せっかく撮った画像が重ねられないという減少が起きる可能性があります。
これでは非常にもったいないですね。
なのでスタックしたいときには必ずソフトフィルターを外すようにしましょう。
ソフトフィルターは一枚撮りのときにすごく活躍するツールです。
使い方次第では最高の相方になってくれます。
リアソフトフィルターという新たな選択肢!
最近になってKenkoが「リアプロソフトン」を発売しました。
レンズの後玉(リア)に貼り付けて使用するタイプのソフトフィルターです。
リアソフトフィルターならではのメリットが複数あります。
どんなレンズにも対応可能!
従来、ソフトフィルターは魚眼レンズには装着できませんでした。
魚眼レンズはレンズの前玉が丸く湾曲していて、フィルターを付けることができません。
また、大口径レンズだとメーカーのフィルター径が対応していない場合があります。
さらに、フタをする際にいちいちフィルターを外さないといけなくなるかもしれないです。
そこで、ソフトフィルターをレンズの後玉(レンズの後ろ側)に貼り付けるという発想に至ったのです。
これであればどんなレンズにも対応可能で、複数のレンズに対応するために大きさの違うフィルターをすべて買う必要がなくなります。
ゴーストやフレアが極小化
レンズの前側につけるフィルターの場合、どうしてもゴーストやフレアが発生する可能性が出てきます。
本当に暗い場所であれば問題ないですが、近くに邪魔な明かりがある場合だとゴーストが出るかもしれません。
超広角レンズの場合はレンズフードをつけることもできません。
その場合、写真の中に大きなゴーストが出る可能性が出てきます。
星景写真ではゴーストやフレアが出たら雰囲気が台無しです。
ですが後玉に貼り付けるソフトフィルターの場合、この問題がなくなります。
周辺部の星の伸びが大幅に抑えられる
私は前玉にはめ込むフィルターを使っていますが、周辺部の星の伸びが気になるところです。

周辺部を見てください。
本来点に写るはずの星が線のように伸びてしまっています。
最初はレンズのせいかなと思ったのですが、どうやらソフトフィルターが悪さしているようでした。
ですが、リアタイプのソフトフィルターを使うとこれが大きく改善されるようです。
詳しくはこのサイトを見てください。
ここで、リアソフトフィルターの注意点がいくつかあります。
・フィルム貼付け時はホコリ混入に注意
・厚みがあるとリアフィルター枠に干渉する場合あり
・電子接点に干渉させない
・自作する場合はフィルムの透明度と滲み加減を確認する
貼り付けはシンプルですが、丁寧な作業が画質に直結します。
撮影前には必ずテスト撮影を行いましょう。
ただ、リアプロソフトンはめっちゃ高いです。
特に理由がなければ普通のフィルタータイプでもいいと思います。
好みでどうぞ。
ソフトフィルターを自由自在に操ろう!
星景写真においてソフトフィルターは非常に強力な武器になります。
しかし、すべての場面で万能というわけではありません。
自分がどんな世界を表現したいか、どのような撮影方法を選ぶのかを意識しながらフィルターの有無や種類を選んでいきましょう。
幻想的な星空を撮るもよし、科学的に正確な星座を記録するもよし。
ソフトフィルターを味方につけて、あなたの理想の星空の世界を自由自在に描き出してください。
では。