
夜空に広がる無数の星と美しい風景を一枚に収める星景写真。
SNSでも人気のジャンルですが、いざ撮ってみると「星がぼやけてる」「ピントが合ってない」と悩む人が非常に多いです。
実は、星景写真のピント合わせは普通の風景写真よりもずっとシビアです。
この記事ではなぜピントが合わないのか、そして確実に合わせるための具体的な方法を初心者にもわかりやすく解説します。
ぜひ最後までお付き合いください。
Contents
なぜ星にピントを合わせるのは難しいのか?
星は遠くて小さい点光源なので、少しでもピントがズレるとすぐにボケてしまいます。
そのため、日中の撮影のようにオートフォーカス(AF)任せではうまくいかないのが現実です。
星景写真でピントが合わない主な原因は以下の通りです:
・星が暗くてAFが効かない
・レンズの無限遠(∞)マークが実際の無限遠とズレている
・ピントリングが撮影中にズレてしまう
・カメラのライブビューで星が見えない
それでは、ピントを正確に合わせるにはどうすればよいのでしょうか?
星にピントを合わせる5つの基本ステップ
ここでは具体的に星にピントを合わせるステップを書いていきます。
カメラをマニュアルモード(M)に切り替える
星景写真ではマニュアルモードが鉄則です。
つまり、f値・シャッタースピード・ISOのすべてを自分で決めないといけません。
機械任せでは誤作動を起こすのでまずはマニュアルモードに切り替えましょう。
Nikonの場合、カメラの上についている撮影モードダイヤルをMに合わせれば大丈夫です。
マニュアルフォーカス(MF)に切り替える
星景写真ではAFが使えないため、まずはカメラのフォーカスモードをマニュアルフォーカス(MF)に切り替えましょう。
次に、レンズの側面にも切り替えスイッチがある場合はAからMに切り替えます。
これでマニュアルフォーカスができるようになります。
AFに頼るとまったく違うところにピントが合ってしまうことが多いです。
明るい星にピントを合わせる
暗くて星が見えない場合はISO3200・シャッタースピード30秒・f値は開放 (f2.8やf1.8など) に設定してください。
ライブビューを使おうにも、そもそも光を取り込む量が少なければ星は写りません。
この設定なら目では見えない星までしっかり写り、明るい星の位置が確認できます。
ライブビューで明るい星を見つけたら、その星のエリアを選択してライブビューを最大に拡大(×10など)してピントを調整します。
星が「最も小さく、鋭く、点のように見える位置」が正確なピントです。
ひとつの星にピントが合えばあとの星にもすべてピントが合っている状態です。
一番明るい星を頼りにしてください。
無限遠マークは頼りすぎない
多くのレンズに付いている∞マークですが、実際の無限遠と一致していないことがあります。
必ずライブビューで拡大し、自分の目で星の形を見て調整しましょう。
ピントリングを固定する
ピントを合わせたらフォーカスリングが動かないように固定します。
撮影中にわずかにズレるだけでも、ピントは大きく外れてしまいます。
マスキングテープやビニールテープなどでピントリングを固定するのがおすすめです。
ズームレンズを使っている場合は、ズームリングも動かないように固定してください。
撮影後に必ず拡大チェック!
シャッターを切ったら、再生画面で星を拡大してピントの確認をしましょう。
ピントがズレていた場合は、すぐに再調整をしてください。
撮ったまま確認せずに何十枚も撮ってしまうと、すべてボツになる可能性もあります。
ミラーレスと一眼レフのピント合わせの違い
星にピントを合わせる際にはカメラの種類によってやりやすさに違いがあります。
ミラーレスカメラ
・ライブビュー性能が高く、暗所でも星が見えやすい
・電子ビューファインダー(EVF)で拡大してピントを確認できる
・ピーキングや拡大アシストなどの便利機能が充実
→ 初心者でもピント合わせがしやすく、星景写真に向いているのがミラーレスです。
ミラーレスはNikonのZシリーズ、Sonyのαシリーズ、CanonのRシリーズなどです。
現在では星景写真ではミラーレスが主流ですね。
一眼レフカメラの特徴
・光学ファインダーでは星が見えないため、ライブビュー必須
・古い機種ではライブビューの暗所性能が弱く、星が見えにくい
→ ミラーレスよりかは不便ですが、一眼レフでもライブビューとテスト撮影を駆使すれば十分対応可能です。
より正確にピントを合わせる応用テクニック
より正確にピントを合わせたい人向けのアドバイスがあります。
バーティノフマスクを使う
天体望遠鏡ユーザーに人気の「バーティノフマスク」は、星に光条(スパイク)を出してピント位置を可視化できるツールです。
明るい星に向けると3本の線が出ますが、それらの線が完全に対象になる位置が正確なピントの位置になります。
ピントの山を掴みづらい場合に特におすすめです。
最近はカメラレンズ用も市販されており、非常に正確なピント調整が可能になります。
使っているカメラレンズの口径にあったものを選んでください。
デジタルフォーカスアシストを使う
ピーキング機能や拡大表示などのフォーカスアシストを活用すれば、暗所でのピント合わせが格段にやりやすくなります。
特にミラーレス機で有効です。
気温変化に注意
夜間の気温低下により、レンズやボディの素材が収縮し、ピント位置が微妙にズレることがあります。
気温が安定してから本番の撮影に入るか、時間経過による再チェックを習慣にしましょう。
ピントが合っているのに星が伸びるのはなぜ?
星は鋭いのに、撮影してみると星が線のように伸びてしまう場合があります。
それはピントではなくシャッタースピードの問題です。
地球の自転の影響で、シャッターを開けすぎると星が線状に写ってしまいます。
私の場合はいつも f1.8, ISO3200 で10秒のシャッタースピードで撮影しています。
シャッタースピードは短いほうがいいですね。
30秒くらいだと星が線みたいに伸びてしまいます。
それ以上露光したい場合は赤道儀を使うしかありません。
ピント合わせは慎重さが命
星景写真におけるピント合わせは、夜空という特殊な環境と機材の特性を理解することが必要不可欠です。
大切なのは「ライブビューで拡大し、明るい星にピントを合わせ、再生拡大で確認する」という丁寧なプロセスを守ることです。
一度慣れてしまえば、星をシャープに捉えた美しい一枚が撮れるようになります。
星空の美しさが一枚に収まったときの感動はひとしおですよ。
では。