「秋の夜空ってなんだか寂しい……」
そんなふうに感じたことはありませんか?
夏の天の川も沈みはじめ、冬のオリオン座はまだ昇ってこない季節ですね。
空を見上げても、目立つ星が少なくて「どこを見たらいいかわからない」と思った方も多いかもしれません。
実際、秋の夜空に輝く一等星は南の低空にあるフォーマルハウトくらいです。
ですが、それだけで「つまらない季節」と決めつけるのはもったいないです。
そこで今回は一等星が少ない秋の夜空の通な楽しみ方をご紹介します。
秋の一等星はフォーマルハウトだけ?アケルナルも見えるかも
「秋の夜空って地味だよね」
天文ファンの間でもそんな声がよく聞かれます。
その大きな理由のひとつが、秋の星座には一等星がほとんどないという事実です。
実際、秋の南の空に輝くみなみのうお座のフォーマルハウト (+1.15等級) は、この季節で唯一目立つ一等星として知られています。
周囲に明るい星がほとんどなく、夜空にぽつんとひとつだけ輝く姿から「南のひとつ星」や「孤高の一等星」と呼ばれることもあります。
一等星なので光害が激しい都内でも条件さえ揃えば見ることができます。
ただし、フォーマルハウトが「秋の唯一の一等星」と断定するのは少し注意が必要です。
というのも、南西諸島や沖縄など日本の南部地域ではさらに南にあるエリダヌス座の一等星のアケルナル (+0.46等級) が地平線近くに昇ってくるからです。
アケルナルはフォーマルハウトよりさらに明るい星ですが、本州では地平線の下にいて見ることができません。
しかし、沖縄のように緯度が低い地域ではアケルナルがかろうじて地平線上に顔を出し、条件が整えば観察可能です。
そのため、正確には「日本の多くの地域では、秋の空に目立つ一等星はフォーマルハウトのみ」というのが正しい表現かもしれません。
一方、秋の初め(9月頃)であれば夏の名残としてこと座のベガやはくちょう座のデネブもまだ空に残っていることがあります。
これらは夏の大三角を構成する星々ですが、20時台の早い時間帯であれば秋の西の空にもその姿を見つけることができます。
つまり、「フォーマルハウトだけ」というのは少し言いすぎで、厳密には地域や時期によって変わるというのが実情です。
それでも、秋の星空が全体的に落ち着いた印象なのは確かですね。
派手な一等星が少ないからこそ、私たちの視線は星座の形や2等星、そして系外銀河の天体へと自然に導かれていくのかもしれません。
秋の空には2等星がいっぱい
秋の星空は確かに1等星は少ないですが、2等星はたくさんあります。
しかもその多くは星座の形を構成する重要な星ばかりで、夜空をじっくり楽しみたい人にとっては宝の山とも言えるでしょう。
2等星一覧はこちらの記事でも紹介してますが、ここでは秋の2等星に絞って解説します。
*今から出す星座の画像はすべて星図アプリ Sky Guide からとっています
まず、最も明るい2等星として南の空に輝くのがつる座のアルナイル(+1.71等級)です。

一等星に近い明るさで輝いていますが、めちゃくちゃ低いので都会ではほぼ見えません。
海沿いや高原に行くと見えるでしょう。
孤高のフォーマルハウトのすぐ下にあり、やや地味ながらも白く鋭い光が印象的です。
アルナイルのすぐ近くには同じくつる座のティアキ(+2.11等級)があります。
つる座は低いですが、結構明るいので見れるかもしれません。
見れたらラッキーですね。
つる座のすぐ東にはほうおう座があり、アンカ(+2.40等級)が輝いています。

低すぎて星がひとつ沈んでしまっていますね。
沖縄からなら全体が見えるでしょう。
つる座と同じく、見れたらラッキーです。
そこから空を見渡せば、くじら座の尻尾に当たるディフダ(+2.02等級)が見えます。

くじら座は巨大な星座なので暗い場所であれば簡単に見つかるでしょう。
そこからさらに東に行くとおひつじ座のハマル(+2.00等級)が見えてきます。

おひつじ座は黄道十二星座のひとつなので馴染み深いですね。
さらに、アンドロメダ座からは3つの2等星が登場します。

アンドロメダ座の中央にあるオレンジ色の星はミラク(+2.04等級)です。
そこからさらにオレンジ色の星アルマク(+2.10等級)と白っぽい星アルフェラッツ(+2.06等級)が見れます。
アンドロメダ銀河もこの辺りにあるので条件がよければ見えるかもしれませんね。
アルフェラッツから西の方へはペガスス座に繋がっていきます。

秋の四辺形の中にはオレンジ色のシェアト(+2.42等級)と白いマルカブ(+2.48等級)があります。
さらに、マルカブから伸びた馬の首の先にはオレンジ色のエニフ(+2.39等級)があります。
これらの星は秋の夜空でも目立つので探してみてください。
北の空では、カシオペヤ座の3つの2等星が目立ちます。

逆さまになったWの中心の左から白いカフ(+2.27等級)とオレンジ色のシェダル(+2.23等級), そして中心の印象的なツィー(+2.39等級)が見れます。
もう2つの星も明るいのでカシオペヤ座の特徴的な逆W字の形が簡単に見つかるでしょう。
北の空、カフから少し離れた位置にはケフェウス座のアルデラミン(+2.45等級)も輝いています。

このように秋の夜空には明るく美しい2等星が15個も散りばめられていて、それぞれが星座の形を際立たせています。
フォーマルハウトだけを追うのではなく、2等星の星座たちに目を向けてみれば、秋の夜空は通の楽しみが詰まった季節であることに気づけるでしょう。
秋は銀河の季節!望遠鏡を持ってくとさらに楽しい
秋の夜空には明るい一等星こそ少ないものの、ディープスカイ天体を観察するには絶好の季節です。
天の川が沈んで星雲や星団は少なくなりますが、だからこそ天の川銀河の星や塵に遮られずに見える銀河が増えるというわけです。
中でも代表的なのがアンドロメダ銀河(M31)ですね。

地球から約250万光年という圧倒的な距離にありながら、肉眼でもぼんやりと光のしみのように見えるほど明るい銀河です。
位置の目印はアンドロメダ座の2等星ミラクです。この星から北へ2つほど星をたどると、ふんわりとした楕円形の光が見えてきます。
双眼鏡でも長く伸びた楕円形がわかり、口径10cm以上の望遠鏡なら中央の輝きや伴銀河まで楽しめるでしょう。
さらにもうひとつ、同じアンドロメダ座に隣接するさんかく座にはさんかく座銀河(M33)という美しい渦巻銀河も潜んでいます。

M33は約270万光年とM31よりやや遠いですが、実は空での見かけの大きさはM31に次いで2番目です。
ただしアンドロメダ銀河より暗いので肉眼で見るのは難しく、暗い空で双眼鏡や広視野の望遠鏡を使うのがおすすめです。
探し方のコツは、こちらもミラクを起点にすること。
ミラクを起点にしてアンドロメダ銀河とさんかく座銀河はちょうど反対の位置くらいにいます。
まずはアンドロメダ銀河を見つけるといいでしょう。
これら2つの銀河は、どちらも銀河系の「ご近所さん」である局所銀河群のメンバーです。
私たちが住む天の川銀河のお隣さんを見ることができるなんて素敵ですね。
最後に
今日は秋の星空の魅力を解説しました。
「秋って地味じゃない?」と思うかもしれませんが、探してみると色々な星が見えてきます。
特に私がおすすめするのはカシオペヤ座です。
秋の北の空には逆W字のカシオペヤ座が見れるはずです。
秋に星を見に行ったら、ぜひカシオペヤ座を見つけてみてください。
では。