天体写真というと、山奥や高原で満天の星を狙う——そんなイメージが強いかもしれません。
ですが現実は厳しいです。
お金、天気、交通手段、体力…。撮影地に行けない日々が続くなか、「せめてベランダからでも星を撮れないだろうか」と思い立ったのが、すべての始まりでした。
しかし、やってみて分かったのです。
ベランダ天体写真は甘くない!
今回はそんな私の体験から生まれた「ベランダあるある」をお届けします。
Contents
極軸合わせにASIAIRが必須な理由
まず直面したのは極軸合わせ問題です。
遠征地のように広くて三脚の足を自由に伸ばせる環境とは違い、ベランダでは北極星がまったく見えません。
南向きのベランダだから無理もないですね。
赤道儀のポーラファインダーを覗いても壁しか見えません。
そんなときに頼りになるのが、ASIairの座標解析による極軸補正です。
赤道儀の向きを少しずつ変えて、タブレットを見て「今はこのぐらいズレてます」と教えてもらいながら調整……。
地味で疲れますが、これがないとまともに撮影ができません。
逆に、ASIairを導入してから撮影効率が一気に上がりました。
撮りたい天体は屋根の外
南向きのベランダって、一見天体写真に有利に思えますよね。
確かに、いて座やさそり座の天の川中心部は視界に入ります。
ですが現実はそう甘くありません。
ベランダの構造上、北、西と東、そして天頂が完全に死角です。

こんな感じで、撮れる範囲はかなり限られます。
はくちょう座やペルセウス座などは全く撮れません。
一応北向きのベランダもあるんですが、そっちは狭すぎて小型の望遠鏡しか出せないので不便極まりないです。
「さぁ撮影開始だ」と思ったら数分で屋根の上に沈んでしまったり、柱や軒の出っ張りにかかってアウトだったりします。
東から昇ってくる対象を待ち構えて…という戦法も取れず、構図とタイミングの縛りがとにかく厳しいです。
「撮りたいものを撮る」ではなく、「撮れるものを探して撮る」というのが日課になっています。
室内の照明が写り込む!遮光カーテンを導入するまで
せっかく撮れたと思って画像を確認すると、背景がものすごく明るい…。
その原因はなんとリビングの照明でした。
カーテンから漏れ出たわずかな光が、鏡筒やフードの隙間から忍び込んでいたのです。
リビングを真っ暗にして生活するわけにもいかず、遮光カーテンを購入して完全遮光することで解決しました。
それまでは「今日こそいける!」と思ったデータが部屋の明かりのせいで全滅という日が続き、さすがにメンタルにきました。
柵に激突する望遠鏡
ベランダは狭いです。
南向きのベランダはまだマシですが、北向きのベランダは絶望的に狭いです。
ウェイトが回転するときに柵や手すりにぶつかるのは日常茶飯事。
特に怖いのは、追尾中に干渉して鏡筒が動かなくなってしまうことです。
これで何度も撮影計画が台無しになりました。
赤道儀の故障の原因にもなりかねないのでよくありません。
今は赤道儀の回転範囲を計算してからうまく設置していますが、それでも柵との戦いは終わりが見えません。
室外機からポタポタ…天敵「水滴」
ある夏の夜、ベランダで作業していたら上から水滴が垂れてきました。
慌てて上を見上げると、ベランダの室外機から水が滴っていたのです。
望遠鏡を設置する前だったのでよかったですが、一歩間違っていたら機材がびしょ濡れになっていたかもしれません。。
対策としては室外機の下には絶対に機材を置かないことにしました。
朝になったら鏡筒がご近所の家をガン見していて焦る
自動での撮影を朝まで放置していると、望遠鏡がとんでもない方向を向いていることがあります。
ある朝カーテンを開けて青空の下の鏡筒を見たら、なんと望遠鏡がご近所の家のリビングのほうを向いていました。
結構やばいですね。
赤道儀は天体を追尾してるだけなのに、知らない人が見たら「高倍率望遠鏡で家をのぞいている変な人」としか思われません。
しかもフードつきでゴツい見た目なので余計に怪しく見えるんですよね。
慌てて鏡筒の向きを空に戻して、「これは天体写真用です」という紙を貼ろうか本気で悩みました。
朝になったら鳩が来てフンをしていく
ある快晴の朝、北側のベランダの機材の様子を見に行くと…
赤道儀のすぐ横の地面に白い汚れがついていました。
「まさか」と思って上を見上げると、ベランダの屋根の縁に鳩の姿が。
奴らは朝になるとやってくるんです!!
さすがに望遠鏡や赤道儀の上にされなくてよかったですが、かなり焦りました。
機材を朝まで放置するのはよくないかもしれませんが、体力が持ちません。
それでもベランダで星を撮る理由
ここまで読んでいただいた方は「なんでそんな苦労してまでベランダで撮るの?」と思うかもしれません。
ですが、それでもベランダで天体写真を撮る理由はちゃんとあるんです。
それは、寒い冬や暑い夏でも部屋の中から制御できて、撮影を放置してそのまま寝ていられるからです。
遠征のように凍える夜を耐える必要もないし、暑さの中で汗をかきながら待機する必要もありません。
布団の中からASIairで赤道儀を動かし、部屋のWi-Fiで画像を確認するあの快適さは、一度味わうとやみつきになります。
もちろん視界の制限や光害など困難も多いですが、それでも撮れる環境が自宅にあるというのは実はとても恵まれたことなのかもしれません。
みなさんもよければ挑戦してみてはいかがでしょうか。
光害カットに一番オススメなフィルターは Optolong L-Quad Enhance です。
是非記事を読んでみてください。
では。