裏話

私が多波長観測所を作りたいと思った理由[クラウドファンディング]

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ある秋の夜、私は北の空に向けて望遠鏡を構えました。

Hαのフィルターを通して撮影したハート星雲の画像を見て、思わず感動しました。

ファインダー越しには何も見えなかった場所にも濃く赤く、燃えるような水素ガスの姿がそこにあったのです。

Hαは肉眼ではほとんど見えません。

ですがカメラとフィルターを使うことで浮かび上がってきます。

その夜、私は「光には目に見えない色がある」という事実を身をもって体験しました。

なぜ見えなかったものが急に見えたのか?

普段私たちが見ている光は可視光のごく一部です。

しかもカメラで撮っているときでさえ、実際には1つの波長しか見ていないことが多いのです。

たとえば、Hαフィルターだけで撮影すれば水素ガスだけが強調された画像になります。

ですが星雲は水素だけでできているわけではありません。

硫黄([SII])や酸素([OIII]), ヘリウム(HeI), 窒素([NII])など、さまざまな元素がそれぞれ違った波長で光っています。

そのひとつひとつを分けて撮り、あとで合成するのが「多波長観測」です。

例えるなら、天体のCTスキャンを撮って断面図を解剖するようなものです。

通常のRGB撮影が証明写真だとすれば、多波長写真はCTスキャンですね。

そう思うとワクワクしてきませんか?

「もっと知りたい」が止まらなくなった

私は趣味で天体写真を撮っている個人です。

研究者でもなければ、大学に所属しているわけでもありません。

ですが、Hαフィルター1枚では到底わからないことが他の波長を見ることで一気に意味を持ち始めることに気づきました。

そして私はこの宇宙をもっと深く、もっと本質的に理解したくなりました。

  • [SII] 672.4nm : 超新星残骸のショックフロントや、星形成領域から噴出するアウトフローを捉える
  • Hα 656.3nm : 星形成領域に多い強い光
  • [OIII] 500.7nm : 惑星状星雲や高励起ガスに特に強く反応
  • Hβ 486.1nm : Hαとの比からダストの影響(減光)を補正
  • [NII] 658.3nm : 星の進化段階やガスの金属量の手がかり
  • [OI] 630.0nm : 光電離境界、いわば星雲の終わりを示す場所
  • HeI 587.6nm : O型星など強力な紫外線源の存在を示す
  • [ArIII] 713.6nm : 高励起でしか光らないため、惑星状星雲などの診断に使える

これら8つの波長それぞれに非常に大切な意味があります。

1枚のフィルターでは撮れない。

1枚の写真では見えない。

ならば、私がそれをすべて撮ってみよう。

8つの波長で撮影した幻想的な写真が見てみたい。

そう考えるようになったのはごく自然な流れでした。

「観測所」を作るという選択肢

アマチュアどころか、プロの研究者でも8種類のフィルターを使い分けている人は極めて稀です。

特にプロの天文学者は観測時間の枠を巡る競争が激しく、8つの波長で同じ天体を撮るというアイデアはあってもなかなか実現できません。

そこで、アマチュアの自由な発想を活かせば天文学の未来が広がると思いました。

例えばオリオン大星雲。

私は [SII], Hα, [OIII], Hβ, [NII], [OI], HeI, [ArIII] の8波長で撮影されたオリオン大星雲を見たことがありません。

[SII], Hα, [OIII] の3つを使ったSHO合成は有名でも、それ以外は見向きもされてきませんでした。

本来、天体写真とは宇宙の本来の姿を記録するものだと思います。

だからこそ [SII], Hα, [OIII] という3つの波長を超えて、色々な波長を通して撮影してみることで新しい世界が見えてくると考えています。

最初はアマチュア機材に8枚のフィルターから始まると思います。

ただ、それだけでも天文ファンの人にとっては価値があることだと思います。

8つのフィルターなんて前代未聞ですよね笑

個人の夢ではなく社会の財産になる観測所

私が構想している観測所の一番の特徴は、観測したデータをすべて一般公開することです。

それも研究機関の許可がいるようなものではなく、完全にフリー、二次利用も商用利用も自由な形です。

  • 子どもたちが自由研究で使える
  • 大学生が天文学や物理学のレポートに使える
  • 研究者や開発者が画像処理の実験に使える
  • アマチュアがPixInsightでの合成練習に使える
  • SNSで合成写真がバズる
  • 誰かが個展を開催

つまり、誰の手にも渡る可視光の多波長データベースを作ることが私の最終目標です。

想像してみてください。

  • 全く新しい星雲の姿がわかる
  • 超新星残骸の仕組みがより詳しくわかる
  • 天文学者が8つの波長を元に新しい発見をして議論になる
  • 赤一辺倒ではなく虹色の星雲の画像が作られてバズる
  • 8つの波長で撮影されたオリオン大星雲のデータが公開され、SNSがPixInsightの合成画像で盛り上がる
  • 子どもたちが画像処理の勉強を始める

これはまさに天文界における革命にもなり得る挑戦です。

それが今始まろうとしています。

そのためにクラウドファンディングを立ち上げました

私は今、その第一歩としてCampfireでクラウドファンディングを立ち上げました。

プロジェクトページはこちらです。↓

Campfireのページ

コンセプトイメージはこんな感じです。

このページには使用する望遠鏡、カメラ、フィルター構成、ストレッチゴールなど、
詳細な仕様もすべて載せています。

ぜひ見てみてください。

特に、[OI], HeI, [ArIII] の3つのフィルターは市販されていないので特注する予定です。

特注までするアマチュアは今まで聞いたことがないですよね。

ただ私はやります。

それは今まで見れなかった世界を切り開くためです。

「本来星雲はどういう姿をしているの?」

「超新星残骸って実際どうなってるの?」

「惑星状星雲ってわかんないことだらけだけどどういう分布をしてるの?」

「銀河の腕にはどんな元素があるの?」

そんな疑問に答える時代がやってきました。

ただ私は、宇宙の本来の姿を明らかにしたいだけです。

そしてそれを世界中の人達と共有したい。

それがこのプロジェクトの一番の目的です。

Campfireのページ

一人でもいい、誰かの心に届いてほしい

私は有名な科学者でもなければ、インフルエンサーでも起業家でもありません。

ただ、「夜空にあるものをできる限り正確に見たい」と思ったひとりの天体写真ファンです。

ですが、もしこの想いに共感してくれる人がいたらそれは何よりもうれしいことです。

このプロジェクトが成功した場合、未来にはこの観測所で得られたデータが誰かの探究心に火をつけることになるでしょう。

それはもう私だけの夢ではないと思っています。

よかったらぜひプロジェクトページをのぞいてみてください。

そして少しでも「応援したいな」と感じていただけたなら、そっと背中を押していただけたらうれしいです。

支援をお待ちしています。

Campfireのページ

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