夜空にWやMの形を描く有名な星座──それがカシオペア座です。
こんな感じの星座ですね。

…あれ?天文書では「カシオペヤ座」と書いてあることもある…
この違いはいったい何なのでしょうか?
そして、どっちが正しいのでしょうか?
その違いを天文学が大好きな私が解説します。
2つの呼び方の由来
「カシオペア座」と「カシオペヤ座」の違いは、もともとの英語名”Cassiopeia”を日本語に置き換える際の発音の違いにあります。
Cassiopeiaという名前は、ギリシャ神話に登場するエチオピア王妃カシオペイア(Cassiopeia) に由来しています。
彼女は自分の美貌を誇ったことで海の神ポセイドンの怒りを買い、その傲慢さが原因で天に星座として飾られたという逸話を持っています。
つまり星座名は神話からきた固有名詞であり、その発音をどう日本語化するかは翻訳者や分野によって揺れが生じやすいです。
英語の -ia という語尾は、日本語に音写する際に2つのパターンが存在します。
ひとつは「ア」とする方法、もうひとつは「ヤ」とする方法です。
この表記揺れは日本語の外来語表記全般に見られる現象で、特に古くから定着している天文学用語では「ヤ」を採用するケースが比較的多くあります。
英語の Cassiopeia を日本語に直すと「カシオピア」が近い音になりますが、日本語の天文学分野では慣例的に -ia を「ヤ」と表記する傾向があり、そこで「カシオペヤ」という形が生まれました。
一方で星座を一般向けに紹介する場や学校教育やメディアの世界では、読みやすさや親しみやすさを優先して「カシオペア座」という表記が広く普及しました。
このため、Wikipediaや天文年鑑では「カシオペヤ座」と書かれているのに、教科書やテレビ番組では「カシオペア座」と表示されるというダブルスタンダードが長く続いています。
なので、最初は「カシオペヤ座」だったのが段々「カシオペア座」という人も出てきたということです。
最近では、特に一般向けの説明では「カシオペア座」というのが当たり前になっています。
天文学会での正式名称は「カシオペヤ座」
日本における天文学分野では、1950年代から星座名や恒星名の日本語表記を統一する動きがありました。
戦後の天文学研究が国際的に活発になるなかで、国内でも学術文献や観測報告書の記述に一貫性を持たせる必要が高まったことが背景にあります。
当時は同じ星座でも資料によって呼び方が異なることが多く、海外の研究成果を引用したり、異なる観測所同士でデータを突き合わせたりする際に混乱が生じていました。
そこで、日本天文学会は1952年に「星座名の日本語表記に関する統一案」を採択します。
この統一案では国際天文学連合(IAU)が英語で定めた星座名をもとに、日本語表記をひらがなまたはカタカナで定める方針が示されました。
その際、Cassiopeia の末尾 -ia は「ヤ」と表記するルールが適用され、公式に「カシオペヤ座」が採用されました。
この決定以降、天文学の学術文献・観測報告・天文年鑑・理科年表など、専門的な刊行物では一貫して「カシオペヤ座」が使われています。
理科年表や天文年鑑、天文学辞典など権威ある出版物では例外なくこの表記が採用されています。
天文学会としては星座名は観測データや論文の中で国際的に通用する正確さを保つ必要があるため、この統一ルールを厳格に守ってきたのです。
一方で、この正式名称が一般社会にまで完全に浸透しているわけではありません。
教育現場やメディアでは「カシオペア座」という呼び方が広く使われています。
これは日本天文学会の採用基準が必ずしも義務ではなく、あくまで学術的標準にとどまっているためです。
しかし、天体写真家や観測者など天文学に深く関わる人々の間では正式表記「カシオペヤ座」が自然に使われる文化が根づいています。
「カシオペア」という電車があった
「カシオペア座」と「カシオペヤ座」の話をしていると、もうひとつ連想されるのがかつて日本を走っていた豪華寝台特急「カシオペア」です。
こんな感じの電車です。

昔の電車なので私は乗ったことがないですが… > <
この電車には一般的な呼び方の「カシオペア」が採用されていました。
おそらく多くの人にとって「カシオペア」は「カシオペヤ」よりも耳なじみがあり、星座の呼び名としても列車の名前としても親しみやすかったのでしょう。
寝台特急「カシオペア」は1999年に上野駅と札幌駅を結ぶ定期列車としてデビューしましたが、2016年に引退してしまいました。
また、後続の「カシオペア紀行」という電車も2025年6月に引退しました。
すでに過去の電車となってしまいましたが、その存在は今でも多くの人の心に刻まれているはずです。
この電車のおかげで「カシオペア」という名前が広まったのかもしれないですね。
結論:どっちも正しい
この記事では「カシオペア座」と「カシオペヤ座」の違いについて解説しました。
簡単に違いを言うと、
- 一般向けの説明や商標には「カシオペア」
- 天文学や天体写真など科学的な文脈では「カシオペヤ」
ということでした。
ちなみに、このブログは科学的な内容が多いので「カシオペヤ座」で統一しています。
みなさんは「カシオペア座」派ですか?
それとも「カシオペヤ座」派ですか?
ぜひコメント欄に書き込んでいただけるとうれしいです!
では。
















